Claim 学校での死亡事故について

学校死亡事故は弁護士で変わる。

学校死亡事故は弁護士で変わる。

学校での死亡事故について 1

学校での死亡事故について

学校での死亡事故について

学校死亡事故は、加害者のいるケースから、加害者がおらず持病に基づくケースまで様々です。
加害者のいるケースで損害賠償請求ができるのは当然ですが、一見すると加害者がいないように見える死亡事故であっても、損害賠償請求が認められることがあります。
例えば、以前より具合の悪いことを訴えていたにもかかわらず、そのことを軽視し、何の対策を講じていなかったために死亡事故につながってしまったという場合などが挙げられます。
その他、通常要求されている安全管理体制に足りない水準で管理をしていたために、死亡事故につながってしまったというケースも存在します。
当事務所では、学校事故の状況のみならず、事故前の被害者の方の状況、学校の管理体制、学習指導要領や裁判例の分析による学校側・加害者側の過失責任の調査分析などを通じて、損害賠償請求ができるか否かについて精査していきます。
その結果、損害賠償請求ができると判断された事例においては、お亡くなりになられたお子さまの無念さを慰謝料額に反映させ、また、ご遺族の苦しみを慰謝料額に反映させ、その他、お子さまが事故に遭わずにご存命であったとしたら生涯稼いでいたであろう収入を算定したり、葬儀費用・ご遺族の休業補償の算定をするなど、漏れることなく損害賠償請求をしていきます。
すべてのケースで損害賠償請求ができるわけではありませんが、ご遺族自身では判断するには難しい事柄ですので、まずは被害者側専門の弁護士に相談されることをおすすめします。

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請求できる損害の内容や請求できる遺族の範囲

(1) 死亡慰謝料・遺族固有の慰謝料

1:はじめに

学校死亡事故の場合、お亡くなりになられてしまったお子さまの精神的苦痛の慰謝料請求(民法第709条,民法第710条)と、ご遺族の精神的苦痛の慰謝料請求(民法第711条)をすることができます。
お子さまの方の慰謝料については、相続するご遺族が相続分に従って請求していくことになります。
お子さまの無念を慰謝料として金銭評価するであるとか、遺族の深い悲しみを慰謝料として金銭評価するというのは、本来不可能な作業であり、多額の金額が付けられても納得できないと思います。
ただし、学校死亡事故が起きてしまった以上、慰謝料額の金銭評価をしなければならず、その評価は、これまでの死亡事故の裁判例などから形成されています。
慰謝料相場の中で高水準での解決を目指すとともに、個別事情による慰謝料増額を目指していきます。
以下では、慰謝料の相場や慰謝料請求することのできるご遺族の範囲についてご説明します。

2:慰謝料相場

2000万円~2500万円

弁護士に依頼した場合、裁判基準というもので慰謝料相場を設定することになります。
裁判基準の慰謝料相場は、2000万円~2500万円とされています。
なお、これらの慰謝料相場は、お亡くなりになられた被害者本人の慰謝料額と、遺族固有の慰謝料額の合計の金額とされています。
上記相場の上限である2500万円での解決を目指すとともに、その他加害者や学校の悪質さやご遺族の精神的苦痛の大きさを調査し、上記相場からさらに慰謝料を上昇させる増額事由があることを立証していきます。
また、事故後しばらくしてお亡くなりになられてしまった場合には、その間の苦痛の慰謝料の請求も別に行っていきます。

3:慰謝料請求ができる遺族の範囲

ア 近親者固有の慰謝料請求をすることのできるご遺族の範囲
  1. ① 父母

    民法711条によって認められます。
    なお、父母には養父母を含みます。

  2. ② 兄弟姉妹

    裁判例では、民法711条類推適用肯定例と否定例に分かれています。
    父母・配偶者・子といった民法711条規定の者と実質的に同視できる身分関係にあったか否かと、被害者の死亡により甚大な精神的苦痛を受けたか否か(最高裁判所昭和49年12月17日判決 最高裁判所民事判例集28巻10号2040頁参照)が判断のポイントになります。
    当事務所でも、お亡くなりになられてしまったお子様の兄弟姉妹の精神的苦痛の慰謝料請求が認められた解決事例が複数あります。

  3. ③ 祖父母

    裁判例では、民法711条類推適用肯定例と否定例に分かれています。
    兄弟姉妹と同様、民法711条規定の者と実質的に同視できる身分関係にあったか否かと、被害者の死亡により甚大な精神的苦痛を受けたか否か(最高裁判所昭和49年12月17日判決 最高裁判所民事判例集28巻10号2040頁参照)が判断のポイントとなっています。
    当事務所では祖父母の近親者慰謝料が認められた例など多数の肯定例があります(否定例はありません。)。

  4. ④ 義父母・親代わりの叔父叔母

    これも兄弟姉妹や祖父母・孫と同様、民法711条規定の者と実質的に同視できる身分関係にあったか否かと、被害者の死亡により甚大な精神的苦痛を受けたか否か(最高裁判所昭和49年12月17日判決 最高裁判所民事判例集28巻10号2040頁参照)が判断のポイントとなっています。

イ 亡くなられたお子さま本人の慰謝料請求をすることができるご遺族の範囲

亡くなられたお子さま本人の慰謝料については、相続人が請求することができます。なお、慰謝料に限らず、逸失利益など亡くなられたお子さま本人に発生する損害はすべて相続人が請求することになります。
お子さまのお父様、お母様が相続人となりますが、父母がいないケースでは祖父母が相続人となります。

(2) 逸失利益(被害者が事故に遭っていなければ稼いでいたであろう損害)

1:はじめに

学校死亡事故の場合、将来仕事をして稼ぎを得ることができたのにそれができなくなる、といった事情が生じます。 こうした事情を損害賠償請求として表したものを「逸失利益(いっしつりえき)」と呼びます。 この逸失利益をどのように算定するかというと、①まず、被害者が死亡しなければその後の就労可能期間において得ることができたと認められる年収(基礎収入といいます。)を算定します。②次に、被害者がまだ存命だったとした場合、収入も得られますが、その分、生活費もかかってくるため、支出されたであろう生活費を控除します。③最後に、何歳まで働いていたかを決め、その年数を掛けます。ただし、一括して賠償金を受け取るため、中間利息の控除というものが行われます。 以上の①~③を計算式に直すと、「基礎収入✕(1-生活費控除率)✕(就労可能期間の終期までの年数に対応する中間利息の控除に関するライプニッツ係数-就労開始年齢までの年数に対応する中間利息の控除に関するライプニッツ係数)」という計算式になります。 以下では、①基礎収入、②生活費控除率、③就労可能年数と中間利息控除について、それぞれ詳細解説をしていきます。

2:基礎収入

日本の裁判例では、男の子であるか女の子であるかによって、算定方法が異なっています。
これは、学生の事故の場合、将来どのくらいの稼ぎを得ることになるのか不明なため、現在の平均収入額を参考に算定せざるを得ないためです(現在の平均収入は男女差があります)。
これ自体不合理な算定方法ではあり、いずれ算定方法自体が変更になる可能性もありますが、ひとまず現状の算定方法を紹介します。

ア 男の子の場合

賃金センサス第1巻第1表の産業計、企業規模計、学歴計、男性全年齢平均の賃金額を基礎収入額とするとされています。
例えば、平成30年の男の子の学校死亡事故の場合ですと、基礎収入額は558万4500円とされます(他の年の死亡事故の場合でもそこまで大きくは変わりません。)。

イ 女の子の場合

女の子の場合の平成30年賃金センサス第1巻第1表の産業計、企業規模計、学歴計、女性全年齢平均の賃金額は382万6300円とされていますが、男の子の場合との金額の差が大きく、時代にそぐわないので、女の子の死亡事故の場合には、男女差をできるだけなくす観点から男女計の賃金センサスを用いる裁判例が増えています(京都地方裁判所平成31年3月22日自保ジャーナル2051号42頁、京都地方裁判所平成28年3月18日判決自保ジャーナル1977号1頁、仙台地方裁判所平成25年3月29日判決自保ジャーナル1906号147頁など多数)。平成30年の男女計の賃金センサスは497万2000円とされています。

3:生活費控除率

お子さまが存命だったとした場合、将来仕事をして収入を得ていく可能性もありますが、反面、生活費もかかってくるため、支出されたであろう生活費は控除することになります。
裁判例の傾向は、男女別で分かれています。

ア 男の子の場合 生活費控除率50%

イ 女の子の場合 生活費控除率40%~45%

女子年少者の場合、基礎収入額が賃金センサスの女性平均ではなく、男女平均とされることが多いため(詳しくはこちら)、生活費控除率は40%~45%とする裁判例が多いです。

4:就労可能年数と中間利息控除

ア 就労可能年数
  1. (ア)始期

    原則として、死亡した年が始期となりますが、学生・児童・幼児については、18歳を始期とすることが多いです。
    学生の場合で、大学卒業を前提として逸失利益を計算する場合は、大学卒業予定の年を始期とします。

  2. (イ)終期

    終期は、原則として67歳までとされています。

イ 中間利息控除

逸失利益というのは、お子さまが将来長期間にかけて取得するはずであった利益を、現在の一時金としてまとめて支給するものなので、本来ならばただちに手に入らないはずの金銭を受領して利息を得ることができるのは不公平な結果となるという理屈から控除がなされるものです。
具体的には、法定利率での利息を得ることができるだろうと考えられていて、その分が引かれることになっています。
なお、民法改正により令和2年4月1日以降と、令和2年3月31日以前とで、法定利率が異なっていますので、それに伴って中間利息控除の係数であるライプニッツ係数も変わってきます。

【ライプニッツ係数(年金現価表)】

就労可能年数 令和2年4月1日以降の
学校事故
令和2年3月31日以前の
学校事故
1 0.9709 0.9524
2 1.9135 1.8594
3 2.8286 2.7232
4 3.7171 3.5460
5 4.5797 4.3295
6 5.4172 5.0757
7 6.2303 5.7864
8 7.0197 6.4632
9 7.7861 7.1078
10 8.5302 7.7217
11 9.2526 8.3064
12 9.9540 8.8633
13 10.6350 9.3936
14 11.2961 9.8986
15 11.9379 10.3797
16 12.5611 10.8378
17 13.1661 11.2741
18 13.7535 11.6896
19 14.3238 12.0853
20 14.8775 12.4622
21 15.4150 12.8212
22 15.9369 13.1630
23 16.4436 13.4886
24 16.6967 13.7986
25 17.4131 14.0939
26 17.8768 14.3752
27 18.3270 14.6430
28 18.7641 14.8981
29 19.1885 15.1411
30 19.6004 15.3725
31 20.0004 15.5928
32 20.3888 15.8027
33 20.7658 16.0025
34 21.1318 16.1929
35 21.4872 16.3742
36 21.8323 16.5469
37 22.1672 16.7113
38 22.4925 16.8679
39 22.8082 17.0170
40 23.1148 17.1591
41 23.4124 17.2944
42 23.7014 17.4232
43 23.9819 17.5459
44 24.2543 17.6628
45 24.5187 17.7741
46 24.7754 17.8801
47 25.0247 17.9810
48 25.2667 18.0772
49 25.5017 18.1687
50 25.7298 18.2559
51 25.9512 18.3390
52 26.1662 18.4181
53 26.3750 18.4934
54 26.5777 18.5651
55 26.7744 18.6335
56 26.9655 18.6985
57 27.1509 18.7605
58 27.3310 18.8195
59 27.5058 18.8758
60 27.6756 18.9293
61 27.8404 18.9803
62 28.0003 19.0288
63 28.1557 19.0751
64 28.3065 19.1191
65 28.4529 19.1611
66 28.5950 19.2010
67 28.7330 19.2391
68 28.8670 19.2753
69 28.9971 19.3098
70 29.1234 19.3427
71 29.2460 19.3740
72 29.3651 19.4038
73 29.4807 19.4322
74 29.5929 19.4592
75 29.7018 19.4850
76 29.8076 19.5095
77 29.9103 19.5329
78 30.0100 19.5551
79 30.1068 19.5763
80 30.2008 19.5965
81 30.2920 19.6157
82 30.3806 19.6340
83 30.4666 19.6514
84 30.5501 19.6680
85 30.6312 19.6838
86 30.7099 19.6989

(3) 葬儀費用・墓石建立費など

一般に、葬儀(訪問客の接待も含みます。)やその後の法要(四十九日・百日の法要等)・供養等を執り行うためにする費用、仏壇、仏具購入費、墓碑建立費等については、150万円の範囲内で賠償を認めるという取扱いがなされています(なお、香典が引かれない代わりに香典返しは損害として認められていません。)。
総額が150万円に満たない場合には、現実の支出額の全額が認められます。
葬儀費用等の総額にかかわらず、遺体搬送料など葬儀を行わなくてもかかる費用については、葬儀費用とは別に損害として認められることになっています。
なお、事例によっては、150万円以上の葬儀費用が認められることもあります。

(4) 駆けつけ費用

家族の病院への駆けつけ費用や、遠方の家族の葬儀参加のための費用などが認められることがあります。

(5) 遺族の治療費や休業損害

故人の治療費や休業損害ではなく、遺族の治療費や休業損害のため、これを認めるべきではないとする裁判例や学説も存在します。
しかしながら、森冨義明・村主隆行編編『交通関係訴訟の実務』161頁以下古市文孝裁判官「間接損害の諸問題2(被害者の近親者の損害)」によると、「原則否定説に立って近親者の治療費・休業損害等を一切認めないというのは,明解ではあるものの,やや硬直的な考えであるとも思われます。」とされていて、詳細な立証により、相当因果関係のある損害として認められることがあります。
京都地方裁判所平成31年3月22日判決(自保ジャーナル2051号42頁)は、子の死亡により経営する飲食店を休業した父の休業損害について、子が死亡した父の悲しみは深いものであり、相応の期間の休業はやむを得なかったものと認められるとして、1.2か月間の休業損害(本来得られるはずの利益に加えて家賃・従業員給与・駐車場料金を加算した金額)を認めています。
また、遺族の心療内科治療費を認めた裁判例も複数存在します(名古屋地方裁判所平成14年12月3日判決交通事故民事裁判例集第35巻6号1604頁、東京地方裁判所平成15年2月25日判決自保ジャーナル1511号18頁、東京地方裁判所平成19年12月17日判決交通事故民事裁判例集第40巻6号1619頁、横浜地方裁判所平成23年10月18日判決判例時報2131号86頁など)。

(6) 事故後しばらくしてお亡くなりになられた場合の損害

事故後しばらくしてお亡くなりになられたという場合は、その間、下記のような様々な損害が発生し、これらも損害賠償として認められることになります。

1:治療費

必要かつ相当な実費全額が認められます。
治療費については、事故後すぐにお亡くなりになられた場合でも当然に全額認められることが多いです。

2:入院付添費

お子さまが入院している間の、家族の付添い費用が認められることが多いです。
入院付添費は、日額6500円というのが裁判の一般的な基準とされていますが(東京地方裁判所平成25年3月7日判例タイムズ1394号50頁など)、症状の程度や被害者が幼児・児童である場合は1割~3割の範囲で増額が考慮されることがあります(7150円~8450円)。
死亡事故で近親者の入院付添いを認めた裁判例としては、下記のようなものがあります。

3:付添人交通費

入院付添費が認められる場合、付添いをする家族の病院までの交通費が認められます。

4:入院雑費

入院1日につき1500円が入院雑費として認められています。

5:傷害慰謝料

お子さまが学校事故後死亡するまでの間の精神的苦痛の慰謝料も、死亡慰謝料とは別に請求することができます。
裁判例の傾向としては、入院期間を主たる判断材料として慰謝料計算をすることが多く、裁判基準としては下記のように考えられています。

入院1か月 53万円
入院2か月 101万円
入院3か月 145万円
入院4か月 184万円
入院5か月 217万円
入院6か月 244万円
入院7か月 266万円
入院8か月 284万円
入院9か月 297万円
入院10か月 306万円
入院11か月 314万円
入院12か月 321万円
入院13か月 328万円
以降1か月ごとに 6万円加算

学校死亡事故の場合、傷害の程度が著しいことがほとんどですので、上記の裁判基準の傷害慰謝料額から更に20~30%以上の増額がなされることがあります。

(7) 損害賠償関係費用その他

その他の損害としては、下記のようなものがあります。

  1. (1)死亡診断書・カルテなどの文書料
  2. (2)医師の意見書代
  3. (3)学校事故によって無駄になってしまった支払済みの教育費や旅行代金など

(8) 着衣損害・携行品

被害者が着ていた衣服、携行品(カバンやスマートフォンなど)に損傷がある場合、その損害についても賠償請求することができます。

(9) 遅延損害金

学校事故の日から遅延損害金が発生します。
その利率については、令和2年3月31日までの学校事故の場合は5%とされています。
令和2年4月1日以降の利率は、事故日によって異なるとされています(民法第404条3項)。
なお、令和2年4月1日から令和5年3月31日までの学校事故の場合は3%と決まっています(民法第404条2項)

(10) 弁護士費用

民事訴訟を提起すると、判決で認容された損害額の10%程度が弁護士費用の損害として更に認定されます。
なお、裁判で認定された弁護士費用は、実際依頼する弁護士に支払う弁護士費用とは別物です。

当事務所にご依頼いただく場合の弁護士費用については、こちらをご覧ください >>

この記事の監修者弁護士

小杉 晴洋 弁護士
小杉 晴洋

被害者側の損害賠償請求分野に特化。
死亡事故(刑事裁判の被害者参加含む。)や後遺障害等級の獲得を得意とする。
交通事故・学校事故・労災・介護事故などの損害賠償請求解決件数約1500件。

経歴
弁護士法人小杉法律事務所代表弁護士。
横浜市出身。明治大学法学部卒。中央大学法科大学院法務博士修了。

所属
横浜弁護士会(現「神奈川県弁護士会」)損害賠償研究会、福岡県弁護士会交通事故被害者サポート委員会に所属後、第一東京弁護士会に登録換え。