事故類型別の解決
学校事故の類型によって解決方法が異なります。

事故類型別の解決

事故類型別の解決 1
学校の損害賠償責任を認めさせることができるか

学校事故は様々な類型があります。
加害者のいる事故であれば、加害生徒やその親に対して、損害賠償請求をしていくことになります。
ただし、加害生徒自身は学生で資力がないことが多いですし、その親も、学校事故に対応できる保険に入っていないことも多く、また、損害賠償できるだけの資力を有していないこともあります。
しかしながら、加害者のいる学校事故の場合であっても、教師など学校側の管理が行き届いていれば、事故に至らなかったのではないかと考えられるケースも多くあります。
また、学校の安全措置が不十分なために事故になってしまった場合や、指導ミス・指導不足により事故に繋がってしまうというケースも多くみられます。
これらの場合、学校に損害賠償責任を認めさせることが重要となってきます。
学校は、自身の教育に自信を持っていますから、責任を否定してくることが多いですが、学習指導要領からの逸脱などを丁寧に立証し、学校に対する責任追及をしていく必要があります。
以下では、幼稚園・保育園、小学校、中学校、高校、大学・高専、養護学校・特別支援学級といった段階別の学校の責任を見ていきます。
また、後半では、事故の起こりやすい体育の授業や部活のスポーツ別の学校の責任を見ていきます。

事故類型別の解決 2
学校別
(1) 幼稚園・保育園

1:はじめに
保育士さんらは、「子どもが、どこで、誰と、どんなことをしているのかを常に把握する義務(児童動静把握義務)を負っている」と考えられています(さいたま地方裁判所平成21年12月26日判決 判例タイムズ1324号107頁)。
また、和歌山地方裁判所昭和48年8月10日判決(判例時報721号83頁)は、まったく予期できないなどの特別の事情が無い限りは、幼児の生活関係全般に及ぶ監督義務があるとしています。
以上のとおり、幼稚園や保育園には、幼児が事故に遭わないようにするための厳しい義務が課せられているといえ、予見できない突発的な事故でない限り、幼稚園や保育園は事故の責任を負う傾向にあります。
2:幼稚園・保育園の責任を認めた裁判例
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① やかんにつまずき熱湯を浴びてやけどした事故
(東京地方裁判所昭和45年5月7日判決 判例時報612号66頁)
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② 綱引きの練習中に指を切断した事故
(大阪地方裁判所昭和48年6月27日判決 判例時報727号65頁)
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③ プールにおける溺死事故
(大阪地方裁判所昭和62年3月9日判決 判例タイムズ651号140頁)
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④ サッカーゴール転倒による事故
(岐阜地方裁判所昭和60年9月12日判決 判例時報1187号110頁)
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⑤ うんていに垂れ下がっていた縄跳び用の縄に首を引っかけてしまったことによる死亡事故
(浦和地方裁判所平成12年7月25日判決 判例時報1733号61頁)
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⑥ うつぶせ寝による死亡事故
(福岡高等裁判所平成18年5月26日判決 判例タイムズ1227号279頁)
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⑦ 用水路転落による死亡事故
(千葉地方裁判所平成20年3月27日判決 判例タイムズ1274号180頁)
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⑧ 東日本大震災避難中の津波による死亡事故
(仙台地方裁判所平成25年9月17日判決 判例時報2204号57頁)
(2) 小学校

1:はじめに
小学生同士のケンカやいじめなどの場合、その加害児童の親が責任を負うことが多いです(民法第714条1項)。
また、小学校の管理体制が不十分であった場合には、学校が責任を負うことになります。
なお、幼稚園・保育園の場合と異なり、被害生徒自身の過失が考慮されることもあります。
2:授業中の事故で学校の責任を認めた裁判例
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① 校庭の砂場にスコップが埋没放置されていて、体育の授業で走り幅跳びをした児童がケガをした事故
(神戸地方裁判所尼崎支部昭和46年5月21日判決 判例時報647号74頁)
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② 理科実験中の事故
(福岡地方裁判所久留米支部昭和53年1月27日判決 判例時報896号70頁)
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③ プール飛び込み事故
(大分地方裁判所昭和60年2月20日判決判例時報1153号206頁,山口地方裁判所岩国支部平成3年8月26日判決判例タイムズ779号128頁,広島地方裁判所平成9年3月31日判決判例タイムズ958号130頁,松山地方裁判所平成11年8月27日判決判例タイムズ1040号135頁)
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④ 水泳中の他の児童との衝突事故
(千葉地方裁判所平成11年12月6日判決 判例時報1724号99頁)
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⑤ 体罰と自殺
(神戸地方裁判所平成12年1月31日判決判例タイムズ1024号140頁,福岡地方裁判所小倉支部平成21年10月1日判決判例タイムズ1321号119頁)
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⑥ 組み立て体操落下事故
(名古屋地方裁判所平成21年12月25日判決 判例タイムズ1333号141頁)
3:校外活動中の事故で学校の責任を認めた裁判例
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① 遠足中の崖からの転落事故
(浦和地方裁判所平成3年10月25日判決 判例タイムズ780号236頁)
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② 校外授業中の交通事故
(京都地方裁判所平成8年8月22日判決 判例タイムズ929号113頁)
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③ 林間学校中の窓からの転落事故
(大阪地方裁判所平成24年11月7日判決 判例タイムズ1388号130頁)
4:給食中の事故で学校の責任を認めた裁判例
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① そばアレルギーによる窒息死事故
(札幌地方裁判所平成4年3月30日判決 判例タイムズ783号280頁)
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② 食中毒事故
(大阪地方裁判所堺支部平成11年9月10日判決 判例タイムズ1025号85頁)
5:休み時間・放課後・休日中の事故で学校の責任を認めた裁判例
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① 休日に小学校の体育館で鬼ごっこをしていた児童が天井裏に入ったところ、天井版が破れて転落死した事故
(大阪地方裁判所昭和51年2月27日判決 判例タイムズ340号254頁)
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② 校舎屋上からの転落事故
(広島地方裁判所昭和52年6月22日判決 判例時報873号79頁)
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③ いじめ・暴行
(浦和地方裁判所昭和60年4月22日判決判例タイムズ552号126頁,長崎地方裁判所昭和63年12月14日判決判例タイムズ696号173頁,金沢地方裁判所平成8年10月25日判例時報1629号113頁)
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④ 昼休みの児童間衝突事故
(甲府地方裁判所平成15年11月4日判決判例タイムズ1162号238頁,東京地方裁判所平成17年9月28日判決判例タイムズ1214号251頁)
(3) 中学校

1:はじめに
幼稚園や小学校の場合と異なり、生徒間事故・事件の場合、加害生徒自身が不法行為責任を負うことが出てきます。
なお、いじめが不法行為として損害賠償請求の対象となる基準は、広島地方裁判所平成19年5月24日判決(判例タイムズ1248号271頁)において、「中学生くらいの子供間においてなされる、からかい、言葉によるおどし、嘲笑・悪口、仲間はずれ等の有形力の行使を伴わない行為は、それ自体直ちに不法行為に当たるとはいえず、叩く・殴る・蹴るなどの暴行行為であっても、その態様や程度によっては必ずしも不法行為に当たるとはいえない場合もあり得るが、これらの行為を特定の生徒に対し長期にわたって執拗に繰り返して実行し、被害生徒に肉体的・精神的苦痛を与えた場合には、当該行為は、被害生徒の身体的自由、人格権を不法に侵害するものとして不法行為に当たる。」と説明されています。
学校のいじめに関する責任ついては、前掲の広島地方裁判所平成19年5月24日判決(判例タイムズ1248号271頁)は、「公立中学校の教師は、学校内において、生徒の心身に対しいじめ等の違法な侵害が加えられないよう適切な配慮をする注意義務、すなわち、日ごろから生徒の動静を観察し、暴力行為やいじめ等がないかを注意深く見極め、その存在がうかがわれる場合には、関係生徒や保護者らから事情聴取するなどしてその実態を調査し、表面的な判定で一過性のものと決めつけずに、実態に応じた適切な防止措置を講じる義務を負う」としています。
学校の授業中の責任については、学習指導要領や指導書に従った授業が行われていたかどうかが重要なポイントとされています。
2:授業中の事故
学校の責任についての考え方
裁判例は、「正課授業は、学校の教育活動の中心をなすものであり、しかも、生徒は、直接教師の指導に拘束される関係にあるから、これを実施する教師は、正課授業中に、生徒の身に生じうる危険を予見し、これを回避するため適切な措置をとるべき注意義務を負っており、その注意義務の程度も課外活動等の任意の活動における場合と比べて高度なものが要求される。」としています(松山地方裁判所平成5年12月8日判決(判例タイムズ847号263頁)など)。
すなわち、授業中の学校事故の場合は、部活動中などの課外活動と比べ、担当教師に高度の注意義務が課せられるとされています。
学校の責任を認めた裁判例
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① 電気かんなの使用を誤った事故
(広島地方裁判所三次支部昭和42年8月30日判決 判例時報519号79頁)
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② 水泳飛込み事故
(東京高等裁判所昭和59年5月30日判決判例タイムズ526号271頁・最高裁判所昭和62年2月6日判決判例タイムズ678号129頁,宮崎地方裁判所昭和63年5月30日判決判例タイムズ678号129頁,大阪高等裁判所平成4年7月24日判決判例時報1439号127頁)
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③ 理科実験中の事故
(広島地方裁判所唱和46年4月15日判決判例タイムズ264号244頁,静岡地方裁判所沼津支部平成元年12月20日判決判例タイムズ726号232頁,熊本地方裁判所平成2年11月9日判決判例時報1377号113頁)
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④ 柔道の授業中に受け身を失敗したことによる事故
(松山地方裁判所平成5年12月8日判決 判例タイムズ847号263頁)
3:部活中の事故で学校の責任を認めた裁判例
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① テニス部員が整地用ローラーを駆け足で牽引中、転倒してローラーの下敷きになった事故
(静岡地方裁判所沼津支部昭和62年10月28日判決 判例タイムズ671号187頁)
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② 水泳飛込み事故
(横浜地方裁判所平成4年3月9日判決判例タイムズ791号233頁,東京地方裁判所平成13年5月30日判決判例タイムズ1071号160頁)
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③ 主審にマスクをさせずに審判をさせ、ファールチップによって眼を負傷したケース
(京都地方裁判所平成5年5月28日判決 判例タイムズ841号229頁)
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④ 部活中の熱中症
(徳島地方裁判所平成5年6月25日判決判例時報1492号128頁,神戸地方裁判所平成15年6月30日判決判例タイムズ1208号121頁,名古屋地方裁判所一宮支部平成19年9月26日判決判例時報1997号98頁)
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⑤ 顧問による体罰
(浦和地方裁判所平成5年11月24日判決 判例時報1504号106頁)
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⑥ 剣道部の準備中の悪ふざけによる事故
(大阪高等裁判所平成10年5月12日判決 判例タイムズ987号174頁)
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⑦ 柔道部の練習中の事故
(静岡地方裁判所平成6年8月4日判決判例時報1531号77頁,新潟地方裁判所高田支部平成9年1月30日判決判例時報1633号124頁,福島地方裁判所郡山支部平成21年3月27日判決判例時報2048号79頁,横浜地方裁判所平成23年12月27日判決判例時報2140号28頁)
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⑧ 柔道部活動終了後の部員によるいじめ
(神戸地方裁判所平成21年10月27日判決 判例時報2064号108頁)
4:始業前・休み時間中・放課後の事故で学校の責任を認めた裁判
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① いじめ・暴行
(大阪地方裁判所昭和59年12月25日判決判例タイムズ550号190頁,福島地方裁判所いわき支部平成2年12月26日判決判例タイムズ746号116頁,東京高等裁判所平成14年1月31日判決判例タイムズ1084号103頁,広島地方裁判所平成19年5月24日判決判例タイムズ1248号271頁,名古屋高等裁判所平成24年12月25日判決判例時報2185号70頁)
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② 窓からの転落事故
(松山地方裁判所八幡浜支部昭和60年1月25日判決 判例タイムズ552号215頁)
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③ 休み時間中鉄パイプで野球ゲームをしていたところ、鉄パイプが手元からすっぽ抜けて、近くにいた生徒に当たった事故
(千葉地方裁判所昭和63年12月19日判決 判例タイムズ693号175頁)
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④ 授業開始前の生徒間事故
(仙台地方裁判所平成20年7月31日判決 判例タイムズ1302号253頁)
5:校外活動中の事故で学校の責任を認めた裁判例
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① 海岸での水泳訓練中の事故
(津地方裁判所昭和41年4月15日判決 判例タイムズ190号154頁)
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② 修学旅行中のケンカ
(広島高等裁判所昭和63年12月7日判決 判例時報1311号74頁)
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③ 登山活動中の事故
(松山地方裁判所今治支部平成元年6月27日判決 判例時報1324号128頁)
(4) 高校

1:はじめに
学校側の責任が認められるケースであっても、被害生徒側に対して比較的高い過失相殺(4割程度)が認められることがあります。
2:授業中の事故で学校の責任を認めた裁判例
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① 懸垂強要の体罰
(東京高等裁判所昭和58年9月28日判決 判例時報1112号54頁)
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② 水泳の授業中における飛び込み事故
(福岡地方裁判所昭和63年12月27日判決判例時報1310号124頁,大阪高等裁判所平成6年11月24日判決判例時報1533号55頁,大阪地方裁判所平成7年2月20日判決判例タイムズ875号296頁,東京地方裁判所八王子支部平成15年7月30日判決判例時報1834号44頁)
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③ 柔道授業中の事故
(名古屋地方裁判所平成4年6月12日判決 判例タイムズ800号244頁)
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④ ラグビーの授業におけるモールの練習中に頚椎捻挫となってしまった事故
(福岡高等裁判所平成9年7月15日判決 判例タイムズ965号102頁)
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⑤ 水泳の授業の潜水練習中の溺死事故
(大阪地方裁判所平成13年3月26日判決 判例タイムズ1072号124頁)
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⑥ マット運動授業中の事故
(札幌高等裁判所平成13年5月25日判決 判例タイムズ1117号173頁)
3:部活動中の事故で学校の責任を認めた裁判例
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① 空手部員による集団暴行事件
(熊本地方裁判所昭和50年7月14日判決判例タイムズ332号338頁)
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② ハンマー投げの練習で、投げられたハンマーが他の生徒の頭部を直撃した事故
(大阪地方裁判所昭和50年9月26日判決判例時報809号74頁,浦和地方裁判所平成8年10月11日判決判例タイムズ954号138頁)
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③ 柔道部における事故
(松江地方裁判所出雲支部昭和54年3月28日判決判例時報940号101頁,名古屋地方裁判所平成4年6月21日判決判例タイムズ800号244頁,福島地方裁判所会津若松支部平成9年1月13日判決判例時報1630号122頁,東京高等裁判所平成21年12月17日判決判例時報2097号37頁,札幌地方裁判所平成24年3月9日判決判例タイムズ1382号110頁,東京高等裁判所平成25年7月3日判決判例タイムズ1393号173頁)
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④ 学校プールの取水口に吸い込まれた事故
(大阪地方裁判所昭和56年2月25日判決 判例タイムズ449号272頁)
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⑤ 鉄棒の練習中、ウレタンマットのない部分に落下した事故
(浦和地方裁判所昭和56年8月19日判決 判例タイムズ455号131頁)
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⑥ 科学部における事故
(福岡地方裁判所昭和61年11月14日判決 判例タイムズ626号174頁)
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⑦ 野球部において、外野にノックするつもりが打ち損じて、ライナーが内野手の顔面に当たり眼を負傷したケース
(広島高等裁判所平成4年12月24日判決 判例タイムズ823号154頁
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⑧ 水泳部における飛び込み事故
(浦和地方裁判所平成5年4月23日判決判例タイムズ825号140頁,東京地方裁判所平成16年1月31日判決判例タイムズ1164号131頁)
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⑨ 陸上部顧問による体罰
(岐阜地方裁判所平成5年9月6日判決 判例タイムズ851号170頁)
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⑩ ボート部における転覆事故
(青森地方裁判所平成5年9月28日判決 判例タイムズ857号139頁)
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⑪ ラグビー部におけるスクラムの練習中に頚髄損傷を負った事故
(大阪地方裁判所平成5年12月3日判決 判例タイムズ868号234頁)
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⑫ バスケットボール部における練習後の心不全死亡事故
(松山地方裁判所西条支部平成6年4月13日判決 判例タイムズ856号251頁)
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⑬ 野球部において、投球距離を短くした打撃練習で、打球が投手の頭部を直撃したケース
(東京高等裁判所平成6年5月24日判決 判例タイムズ849号198頁)
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⑭ 相撲部における熱中症事故
(東京高等裁判所平成6年10月26日判決 判例時報1555号57頁)
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⑮ 野球部における練習後の急性心不全による死亡事故
(水戸地方裁判所土浦支部平成6年12月27日判決 判例タイムズ885号225頁)
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⑯ 体操部におけるトランポリン中の事故
(東京高等裁判所平成7年2月28日判決 判例タイムズ890号226頁)
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⑰ ラグビー部における練習試合敗戦後の猛練習の際の熱中症
(静岡地方裁判所沼津支部平成7年4月19日判決 判例タイムズ893号238頁)
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⑱ 体操部における跳馬の際の事故
(横浜地方裁判所平成9年3月31日判決 判例時報1631号109頁)
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⑲ ヨット部における漁船との衝突事故
(広島地方裁判所平成10年2月25日判決 判例タイムズ1008号182頁)
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⑳ 防球ネットが破れているにもかかわらず打撃マシンによる打撃練習を継続し、打球が防球ネットの破れている箇所を通過して、マシンに球をいれていた選手が眼を負傷したケース
(神戸地方裁判所平成11年3月31日判決 判例タイムズ1011号229頁)
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㉑ 山岳部における熱射病事故
(浦和地方裁判所平成12年3月15日判決 判例タイムズ1098号134頁)
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㉒ 野球部においてバットが他の生徒の眼に当たった事故
(福岡地方裁判所小倉支部平成17年4月21日判決 判例タイムズ1896号136頁)
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㉓ いじめ
(横浜地方裁判所平成18年3月28日判決 判例タイムズ1235号243頁)
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㉔ 野球部においてノックの打ち損じた打球の直撃事故
(名古屋地方裁判所平成18年11月28日判決 判例タイムズ1241号189頁)
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㉕ バスケットボール部における熱中症
(大分地方裁判所平成20年3月31日判決 判例時報2025号110頁)
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㉖ サッカーの試合中の落雷事故
(高松高等裁判所平成20年9月17日判決 判例タイムズ1280号72頁)
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㉗ 陸上大会における棒高跳び競技中の事故
(福岡高等裁判所平成22年2月4日判決 判例タイムズ1342号128頁)
4:始業前・休み時間中・放課後の事故で学校の責任を認めた裁判例
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① 暴行・いじめ
(高松高等裁判所昭和56年10月27日判決判例タイムズ456号109頁,横浜地方裁判所平成13年1月16日判決判例タイムズ1116号256頁)
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② 自由時間中の海への飛込み事故
(東京地方裁判所平成12年12月22日判決 判例時報1773号62頁)
5:課外活動・校外活動中の事故で学校の責任を認めた裁判例
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① 修学旅行中のふざけ合い事故
(津地方裁判所昭和54年10月25日判決 判例時報957号94頁)
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② 運動会における騎馬戦での事故
(福岡地方裁判所平成11年9月2日判決 判例タイムズ1027号244頁)
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③ 修学旅行中の海難事
(横浜地方裁判所平成23年5月13日判決 判例時報2120号65頁)
(5) 大学・高専

1:はじめに
大学や高専の場合、幼稚園・保育園・小学校・中学校・高校と比較すると、学校の責任は認められづらくなります。
これは学生の自主性の差であると思われます。
2:学校の責任を認めた裁判例
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① 空手愛好家会員が退会の際に暴行死した事件
(東京地方裁判所昭和48年8月29日判決 判例タイムズ300号264頁)
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② 山岳部における雪崩事故
(東京地方裁判所昭和63年3月24日判決判例タイムズ676号194頁・最高裁判所第二小法廷平成2年3月23日判決判例タイムズ725号58頁)
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③ 防衛大学校におけるパラシュート降下訓練中の事故
(東京地方裁判所平成4年4月28日判決 判例タイムズ796号107頁)
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④ 大学恒例の大掃除の際の転落事故
(名古屋地方裁判所平成15年9月25日判決)
(6) 養護学校・特別支援学級

1:はじめに
担当教諭の注意義務としては、通常学級の児童・生徒に対する安全配慮義務に加えて、障害の特質に応じた安全配慮義務を負うことになります。
2:学校の責任を認めた裁判例
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① 水泳授業中の事故
(横浜地方裁判所平成4年3月5日判決判例タイムズ789号213頁・東京高等裁判所平成6年11月29日判決判例タイムズ884号173頁)
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② 休み時間中の転落事故
(東京地方裁判所八王子支部平成20年5月29日判決 判例タイムズ1286号244頁)

事故類型別の解決 3
事故類型別の解決法
格闘技
(1) 柔道事故

1:柔道事故の損害賠償請求
柔道は危険性が高く、重度の後遺症を残すケースや死亡事故も多いです。
裁判例を見ると、損害賠償請求が認められるかどうかは、被害者の状況・習熟度などがポイントとされています。
また、柔道は室内競技であるため、学校側が何らの熱中症対策を取らずに柔道をさせていた場合には、損害賠償責任が認められることがあります。
2:柔道事故で学校の責任を認めた裁判例
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① 夏合宿練習中の死亡事故
(損害賠償額約5140万円 福島地方裁判所会津若松支部平成9年1月13日判決判例時報1630号122頁)
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② 部活動終了後の部員同士のいじめ
(損害賠償額約830万円 神戸地方裁判所平成21年10月27日判決 判例時報2064号108頁)
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③ 受け身をマスターしていない相手に技をかけたケース
(損害賠償額約1100万円熊本地方裁判所昭和45年7月20日判決判例時報621号75頁,損害賠償額約2000万円松江地方裁判所出雲支部昭和54年3月28日判決判例時報940号101頁,損害賠償額約330万円名古屋地方裁判所平成4年6月21日判決判例タイムズ800号244頁,損害賠償額約約1900万円松山地方裁判所平成5年12月8日判決判例タイムズ847号263頁)
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④ 既に弱っている相手に対して、連続して技をかけたケース
(損害賠償額約1850万円 東京高等裁判所昭和52年4月27日判決 判例タイムズ357号253頁)
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⑤ 技量差のある相手に対して乱暴な技をかけたケース
(損害賠償額約4900万円静岡地方裁判所平成6年8月4日判決判例時報1531号77頁,損害賠償額約3500万円新潟地方裁判所高田支部平成9年1月30日判決判例時報1633号124頁)
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⑥ 症状を把握していたにもかかわらず、指導者が柔道を続行させた又は病院に受診させなかったケース
(損害賠償額約1億円東京高等裁判所平成21年12月17日判決判例時報2097号37頁,損害賠償額約1億5000万円福島地方裁判所郡山支部平成21年3月27日判決判例時報2048号79頁,損害賠償額約9000万円横浜地方裁判所平成23年12月27日判決判例時報2140号28頁,損害賠償額約1億3700万円札幌地方裁判所平成24年3月29日判決判例時報2148号101頁)
3:柔道事故で加害者の親の責任を認めた裁判例
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① 技量差のある相手に対して乱暴な技をかけたケース
(損害賠償額約4900万円 静岡地方裁判所平成6年8月4日判決 判例時報1531号77頁)
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② 部活動終了後の部員同士のいじめ
(損害賠償額約830万円 神戸地方裁判所平成21年10月27日判決 判例時報2064号108頁)
4:柔道事故で加害生徒の責任を認めた裁判例
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① 既に弱っている相手に対して、連続して技をかけたケース
(損害賠償額約1850万円 東京高等裁判所昭和52年4月27日判決 判例タイムズ357号253頁)
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② 技量差のある相手に対して乱暴な技をかけたケース
(損害賠償額約4900万円 静岡地方裁判所平成6年8月4日判決 判例時報1531号77頁)
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③ 症状を把握していたにもかかわらず、指導者が柔道を続行させた又は病院に受診させなかったケース
(損害賠償額約330万円 福島地方裁判所郡山支部平成21年3月27日判決 判例時報2048号79頁)
(2) 空手事故

1:空手事故の損害賠償請求
空手における練習中や試合中の損害賠償請求事例というのはさほど多くありません。
損害賠償責任が認められたケースでは、集団暴行事件が目立ちます。
2:空手事故で学校の責任を認めた裁判例
集団暴行事件
(損害賠償額約1500万円東京地方裁判所昭和48年8月29日判決判例タイムズ300号264頁,損害賠償額約360万円熊本地方裁判所昭和50年7月14日判決判例タイムズ332号338頁)
3:空手事故で加害生徒の責任を認めた裁判例
集団暴行事件
(損害賠償額約360万円熊本地方裁判所昭和50年7月14日判決判例タイムズ332号338頁)
(3) 剣道事故

1:剣道事故の損害賠償請求
剣道事故の裁判例はさほど多くはありませんが、竹刀の管理に関する損害賠償請求事案が複数存在します。
2:剣道事故で学校の責任を認めた裁判例
剣道部の準備中の悪ふざけによる事故
(損害賠償額約2930万円 大阪高等裁判所平成10年5月12日判決 判例タイムズ987号174頁)
(4) 相撲事故

1:相撲事故の損害賠償請求
相撲事故の損害賠償請求事例は多くはありませんが、熱中症などで学校の損害賠償責任が認められることがあります。
2:相撲事故で学校の責任を認めた裁判例
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① 合宿練習中の熱中症
(損害賠償額約3600万円 東京高等裁判所平成6年10月26日判決 判例時報1555号57頁)
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② いじめ
(損害賠償額約60万円 浦和地方裁判所平成7年12月22日判決 判例時報1585号69頁)
3:相撲事故で加害生徒の責任を認めた裁判例
いじめ
(損害賠償額約60万円 浦和地方裁判所平成7年12月22日判決 判例時報1585号69頁)
球技
(1) サッカー・フットサル事故

1:サッカー・フットサル事故の損害賠償請求
サッカー・フットサルの場合、ルールに従ってプレーをしていれば、加害生徒が損害賠償責任を負うことはほとんどありません。
サッカー特有の点としては、サッカーゴールの下敷きになってしまう事故が挙げられ、この場合、管理者に損害賠償責任が認められることがあります。
2:サッカー・フットサル事故で学校の責任を認めた裁判例
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① サッカーゴール転倒による事故で設置管理者の損害賠償責任が認められたケース
(損害賠償額約1350万円 岐阜地方裁判所昭和60年9月12日判決 判例時報1187号110頁)
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② サッカー大会中の落雷事故で学校や大会主催者などの損害賠償責任が認められたケース
(損害賠償額合計約3億円 最高裁判所平成18年3月13日判決判例時報1929号41頁)
(2) 野球事故

1:野球事故の損害賠償請求
野球の場合、ルールに従ってプレーをしていれば、加害選手が損害賠償責任を負うことはほとんどありません。
ただし、ルールや練習方法に従わずにプレーをしたがために事故が生じた場合には、損害賠償請求が認められることがあります。
また、指導方法や練習方法が不適切であった場合、学校の損害賠償責任が認められている裁判例が複数存在します。
2:野球事故で学校の責任を認めた裁判例
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① 主審にマスクをさせずに審判をさせ、ファールチップによって眼を負傷したケース
(損害賠償額約1700万円 京都地方裁判所平成5年5月28日判決 判例タイムズ841号229頁)
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② 熱中症
(損害賠償額約2360万円 徳島地方裁判所平成5年6月25日判決 判例時報1492号128頁)
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③ 練習後の急性心不全による死亡事故
(損害賠償額約4870万円 水戸地方裁判所土浦支部平成6年12月27日判決 判例タイムズ885号225頁)
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④ 外野にノックするつもりが打ち損じて、ライナーが内野手の顔面に当たり眼を負傷したケース
(損害賠償額約1400万円広島高等裁判所平成4年12月24日判決判例タイムズ823号154頁,損害賠償額約800万円名古屋地方裁判所平成18年11月28日判決 判例タイムズ1241号189頁)
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⑤ 投球距離を短くした打撃練習で、打球が投手の頭部を直撃したケース
(損害賠償額約1億2000万円 東京高等裁判所平成6年5月24日判決 判例タイムズ849号198頁)
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⑥ 防球ネットが破れているにもかかわらず打撃マシンによる打撃練習を継続し、打球が防球ネットの破れている箇所を通過して、マシンに球をいれていた選手が眼を負傷したケース
(損害賠償額約800万円 神戸地方裁判所平成11年3月31日判決 判例タイムズ1011号229頁)
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⑦ バットを放り投げるスイング練習で、放り投げたバットが他の選手にあたり、目を失明したケース
(損害賠償額約5800万円 福岡地方裁判所小倉支部平成17年4月21日判決 判例タイムズ1896号136頁)
3:野球事故で加害生徒の責任を認めた裁判例
ダブルプレーの練習をしていた際に、ノックを補給したサードが、本来セカンドに送球するべきところを、いきなりファーストに送球したため、ファーストの選手が右眼を失明したというケース
(損害賠償額約3000万円 大阪地方裁判所平成11年7月9日判決 判例時報1720号161頁)
(3) バレーボール事故

バレーボールの場合、ルールに従ってプレーをしていれば、加害選手が損害賠償責任を負うことはほとんどありません。
裁判例上も、損害賠償請求が問題となるケースや損害賠償責任が認められたケースというのは多くありません。
プレー中の事故ではありませんが、試合に負けた後の顧問による体罰の事例として浦和地方裁判所平成5年11月24日判決(判例時報1504号106頁)があり、学校に約180万円の損害賠償責任を認めています。
(4) ラグビー

1:ラグビー事故の損害賠償請求
ラグビーの場合、ルールに従ってプレーをしていれば、加害選手が損害賠償責任を負うことはほとんどありません。
他方、タックルなど高い危険性を有する行為が認められているスポーツであるため、指導者・管理者には危険の発生を未然に防止すべき細心の注意が要求されています。
2:ラグビー事故で学校の責任を認めた裁判例
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① スクラムの練習中に頚髄損傷を負った事故
(損害賠償額約9400万円 大阪地方裁判所平成5年12月3日判決 判例タイムズ868号234頁)
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② 合宿中の熱中症
(損害賠償額約5200万円 静岡地方裁判所沼津支部平成7年4月19日判決 判例タイムズ893号238頁)
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③ 高校体育の授業におけるモールの練習中に頚椎捻挫となってしまった事故
(損賠賠償額約350万円 福岡高等裁判所平成9年7月15日判決 判例タイムズ965号102頁)
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④ 練習中の熱中症
(損害賠償額約4060万円 神戸地方裁判所平成15年6月30日判決 判例タイムズ1208号121頁)
(5) ハンドボール事故

1:ハンドボール事故の損害賠償請求
ハンドボールの場合、ルールに従ってプレーをしていれば、加害選手が損害賠償責任を負うことはほとんどありません。
ただし、ハンドボールは体育館など室内で行われることが多いため、指導者・管理者が何らの熱中症対策を取らずにハンドボールをさせていた場合には、指導者・管理者に損害賠償請求責任が認められることがあります。
2:ハンドボール事故で学校の責任を認めた裁判例
熱中症
(損害賠償額約4550万円 名古屋地方裁判所一宮支部平成19年9月26日判決 判例時報1997号98頁)
(6) バスケットボール事故

1:バスケットボール事故の損害賠償請求
バスケットボールの場合、ルールに従ってプレーをしていれば、加害選手が損害賠償責任を負うことはほとんどありません。
ただし、ルールから逸脱した行動を行ったために事故となってしまった場合には、損害賠償請求が認められることがあります。
例えば、バスケットボールの試合中に、わざと顔面を蹴り上げたケースにおいて、加害選手に約4000万円の損害賠償責任が認められた事例があります(鹿児島地方裁判所平成23年11月22日判決)。
また、バスケットボールは体育館など室内で行われることが多いため、指導者・管理者が何らの熱中症対策を取らずにバスケットボールをさせていた場合には、指導者・管理者に損害賠償請求責任が認められることがあります。
2:バスケットボール事故で学校の責任を認めた裁判例
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① 練習後急性心不全で死亡した事故
(損害賠償額約3000万円 松山地方裁判所西条支部平成6年4月13日判決 判例タイムズ856号251頁)
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② 熱中症
(損害賠償額約360万円 大分地方裁判所平成20年3月31日判決 判例時報2025号110頁)
(7) テニス事故

1:テニス事故の損害賠償請求
テニスの場合、ルールに従ってプレーをしていれば、加害選手が損害賠償責任を負うことはほとんどありません。
ただし、打ったボールが、コート外を通行する人に当たってしまったような場合や、審判台の転倒事故の場合には、損害賠償請求が認められることがあります。
2:テニス事故で学校の責任を認めた裁判例
中学1年生部員が整地用ローラーを駆け足で牽引中、転倒してローラーの下敷きになった事故
(損害賠償額約1030万円 静岡地方裁判所沼津支部昭和62年10月28日判決 判例タイムズ671号187頁)
(8) 卓球事故

1:卓球事故
競技者同士の接触もなく、比較的安全なスポーツとされていますが、卓球台に関わる事故が生じることがあります。
2:卓球事故で学校の責任を認めた裁判例
卓球台の下敷きになってしまった事故
(損害賠償額約3600万円 大阪高等裁判所平成9年11月27日判決 判例時報1636号63頁)
個人競技
(1) プールや海の事故

1:プールや海の事故の損害賠償請求
水泳事故は件数は少ないですが、事故となってしまった場合には、重い後遺症が残ってしまったり、死亡してしまうというケースが多く、数千万円の損害賠償請求が認められている例が多数存在します。
類型としては、飛込みの際の事故と溺れてしまった事故が多くなっていて、損害賠償請求が認められるか否かは、指導者・管理者の監視体制がどのようなものであったかがポイントとされます。
2:プールや海の事故で学校の責任を認めた裁判例
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① 飛込み事故
(損害賠償額約3320万円大分地方裁判所昭和60年2月20日判決判例時報1153号206頁,損害賠償額約1億2400万円最高裁判所昭和62年2月6日判決判例タイムズ678号129頁,損害賠償額約9430万円宮崎地方裁判所昭和63年5月30日判決判例タイムズ678号129頁,損害賠償額約2500万円福岡地方裁判所昭和63年12月27日判決判例時報1310号124頁,損害賠償額約1940万円山口地方裁判所岩国支部平成3年8月26日判決判例タイムズ779号128頁,損害賠償額約1億円横浜地方裁判所平成4年3月9日判決判例タイムズ791号233頁,損害賠償額約6000万円大阪高等裁判所平成4年7月24日判決判例時報1439号127頁,損害賠償額約1億1000万円浦和地方裁判所平成5年4月23日判決判例タイムズ825号140頁,損害賠償額約1億0300万円大阪高等裁判所平成6年11月24日判決判例時報1533号55頁,損害賠償額約3500万円大阪地方裁判所平成7年2月20日判決判例タイムズ875号296頁,損害賠償額約6500万円広島地方裁判所平成9年3月31日判決判例タイムズ958号130頁,損害賠償額約7500万円神戸地方裁判所平成10年2月27日判決判例タイムズ982号113頁,損害賠償額約1億6000万円金沢地方裁判所平成10年3月13日判決判例タイムズ988号173頁,損害賠償額約5800万円松山地方裁判所平成11年8月27日判決判例タイムズ1040号135頁,損害賠償額約1億7400万円東京地方裁判所平成13年5月30日判決判例タイムズ1071号160頁,損害賠償額約4420万円東京地方裁判所八王子支部平成15年7月30日判決判例時報1834号44頁,損害賠償額約1億円東京地方裁判所平成16年1月13日判決判例タイムズ1164号131頁)
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② 溺水事故
(損害賠償額約700万円大阪地方裁判所昭和62年3月9日判決判例タイムズ651号140頁,損害賠償額約4840万円東京高等裁判所平成6年11月29日判決判例タイムズ884号173頁,損害賠償額約3830万円大阪地方裁判所平成13年3月26日判決判例タイムズ1072号124頁)
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③ 水泳中の衝突事故
(損害賠償額約4000万円 千葉地方裁判所平成11年12月6日判決 判例時報1724号99頁)
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④ 沖に流された事故
(損害賠償額約820万円 横浜地方裁判所平成23年5月13日判決 判例時報2120号65頁)
(2) 陸上競技事故

1:陸上競技事故の損害賠償請求
陸上競技は、短距離走にしても長距離走についても、激しい動きのため生徒の健康状態の把握が重要であり、これを怠り猛練習を課したような場合には、学校は損害賠償責任を負うことになります。
また、投てき種目については、他者に衝突してしまうことがあるため、選手には注意義務が課せられますし、学校側としても練習や試合の際の事故防止策を取らなければいけません。
2:陸上競技事故で学校の責任を認めた裁判例
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① 投げたハンマーが他生徒の頭部に直撃
(損害賠償額約1060万円大阪地方裁判所昭和50年9月26日判決判例時報809号74頁,損害賠償額約1700万円浦和地方裁判所平成8年10月11日判決判例タイムズ954号138頁)
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② 長時間正座の上、食事を与えないなどの体罰
(損害賠償額約300万円 岐阜地方裁判所平成5年9月6日判決 判例タイムズ851号170頁)
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③ 棒高跳び競技での落下
(損害賠償額約1億1500万円 福岡高等裁判所平成22年2月4日判決 判例タイムズ1342号128頁)
(3) 体操事故

1:体操事故の損害賠償請求
体操事故の場合、他者加害事故はあまり多くないが、高難度の技からの着地失敗事例など、自損事故における重傷事故や死亡事故が多くなっています。
2:体操事故で学校の責任を認めた裁判例
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① つり輪練習中の着地失敗
(損害賠償額約2500万円 山形地方裁判所昭和52年3月30日判決 判例時報873号83頁)
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② 鉄棒の練習中、ウレタンマットのない部分に落下
(損害賠償額約5000万円 浦和地方裁判所昭和56年8月19日判決 判例タイムズ455号131頁)
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③ トランポリン練習中の落下事故
(損害賠償額約7000万円 東京高等裁判所平成7年2月28日判決 判例タイムズ890号226頁)
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④ 跳馬の際の事故
(損害賠償額約7000万円 横浜地方裁判所平成9年3月31日判決 判例時報1631号109頁)
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⑤ 体育のマット運動授業中の事故
(損害賠償額約8000万円 札幌高等裁判所平成13年5月25日判決 判例タイムズ1117号173頁)
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⑥ 平行棒での落下事故
(損害賠償額約1億2000万円 大阪地方裁判所平成22年9月3日判決 判例時報2102号87頁)
(4) スキー・スノーボード事故

1:スキー・スノーボード事故の損害賠償請求
スキー・スノーボード事故については、事故が多く、損害賠償請求が認められた裁判例も多数存在します。
最高裁判例は、「スキー場において上方から滑走する者は、前方を注視し、下方を滑走している者の動静に注意して、その者との接触ないし衝突を回避することができるように速度及び進路を選択して滑走すべき注意義務を負う」としていて(最高裁判所平成7年3月10日判決 判例時報1526号99頁)、衝突事故においては上から滑ってきた者が原則的に責任を負うものとされています。
また、初心者がスキーやスノーボードを習っているという場合、指導者・インストラクター・その所属会社が損害賠償責任を負うことがあります。
さらに、滑落危険箇所に防護ネットなどを設置していなかったために事故になってしまったという場合には、スキー場経営会社やゲレンデの管理会社が損害賠償責任を負うことがあります。
当事務所では、修学旅行中のスキー教室で、初心者であったAさんがスキーで転倒して倒れていたところ、同じく初心者であった他の生徒Bが滑走してきて、衝突したというケースにおいて、事故はAさんが転倒したことに起因するものであるとして争われていましたが、加害生徒Bとスキーインストラクターの責任を認めさせ、Aさんの過失は否定という解決事例があります。
この事例の詳細はこちら。
(5) 登山

1:登山事故の損害賠償請求
道迷い、滑落、転倒などの事故が登山やロッククライミングでは生じることがあります。
仲間うちで登山などを行う場合には、パートナーに決定的な過失がない限りは、損害賠償請求をすることが難しいとされています。
他方で、ツアーなど引率型の登山では、指導者・引率者やそれらの者が所属する組織に対して損害賠償請求をすることができることがあります。
2:登山事故で学校の責任を認めた裁判例
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① 崖から転落したケース
(賠償額約450万円 松山地方裁判所今治支部平成元年6月27日判決 判例時報1324号128頁)
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② 雪が降っている・道が凍結しているといった危険な状況下で登山をさせたケース
(損害賠償額約6500万円最高裁判所平成2年3月23日判決判例タイムズ725号57頁,)
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③ 熱中症となったケース
(損害賠償額約5100万円 浦和地方裁判所平成12年3月15日判決 判例タイムズ1098号134頁)
この記事の監修者弁護士

被害者側の損害賠償請求分野に特化。
死亡事故(刑事裁判の被害者参加含む。)や後遺障害等級の獲得を得意とする。
交通事故・学校事故・労災・介護事故などの損害賠償請求解決件数約1500件。
経歴
弁護士法人小杉法律事務所代表弁護士。
横浜市出身。明治大学法学部卒。中央大学法科大学院法務博士修了。
所属
横浜弁護士会(現「神奈川県弁護士会」)損害賠償研究会、福岡県弁護士会交通事故被害者サポート委員会に所属後、第一東京弁護士会に登録換え。日本弁護士連合会業務改革委員会監事、(公財)日弁連交通事故相談センター研究研修委員会青本編集部会。