脊柱その他の体幹骨の障害
腰椎圧迫骨折【学校事故被害者専門弁護士解説】

本稿では、腰椎圧迫骨折について整理するとともに、日本スポーツ振興センターが定める障害見舞金制度における後遺障害等級とのかかわりについて解説いたします。
なお、本記事は医学的事項を含むため、医学博士早稲田医師(日本精神神経学会専門医・指導医、日本臨床神経生理学会専門医、日本医師会認定産業医)に記事の監修をいただいております。
腰椎圧迫骨折
⑴そもそも腰椎とは?

脊椎は、体幹骨の一つであり、中枢神経である脊髄を保護する役割とともに、体幹支持機能を併せ持っています。脊椎は、頭部に近いほうから頸椎・胸椎・腰椎(及び仙骨・尾骨)と分類されており、腰椎とは文字どおり腰の部分に位置する脊椎を指します。また、脊椎は24個の椎骨によって構成されており、頸椎が7個、胸椎が12個、腰椎が5個となります。

椎骨はそれぞれ番号が振られています。たとえば5個の腰椎については、頭部に近いほうから順に、第1腰椎、第2腰椎、…、第5腰椎とされており、L1~L5と省略的に表記されることもあります。
※ただし、文脈によっては、L〇という記載は腰椎ではなく髄節等を示す場合もありますので、その点は留意しておきましょう。
⑵腰椎圧迫骨折とは

骨折について、外力の作用方向に基づき分類した際に、上下の圧迫力によって生じた骨折を圧迫骨折といいます。上図を見ていただけるとイメージしやすいかと思います。
この圧迫骨折が、腰椎について生じたものを、特に腰椎圧迫骨折と呼びます。
胸椎・腰椎の損傷については、椎体を3つの部位に区分して損傷の程度を把握することがあります。
椎体の前半分を前方支柱、椎体の後ろ半分を中央支柱、椎弓より後方を後方支柱と3つの区分に分ける three-column theory の考え方があり、脊柱不安定性の有無を鑑別するために有用だと言われます。
胸椎・腰椎の場合はこの考え方に従い、前方支柱(椎体の前方)のみが損傷されたものを圧迫骨折、前方支柱と中央支柱(要は椎体全体)に損傷を認めるものを破裂骨折と区分することがあります。
⑶腰椎圧迫骨折が生じる原因
(標準整形外科学(第15版)(医学書院)、871頁)
腰椎圧迫骨折は、衝突や転倒、転落などの外力が原因で発生します。
具体的には交通事故、労働災害、スポーツ外傷、高所からの飛び降りなどが原因になります。
そのため、学校生活においては、運動系の部活動に入部していたり、あるいは体育の授業でスポーツをする際などに負傷する可能性があるといえるでしょう。特に柔道やアメリカンフットボール等の身体の接触が多いスポーツではその可能性も高いと考えられます。また、登下校中の交通事故で腰椎圧迫骨折を負傷する可能性もあります。
⑷腰椎圧迫骨折の症状
腰椎圧迫骨折を受傷すると、腰痛や腰周辺のしびれといった神経症状のほか、腰部の可動域制限が現れることがあります。また、荷重機能に支障が生じることもあり、コルセット等の硬性補装具の装用が必要になることも考えられるでしょう。
腰椎圧迫骨折の後遺症とスポーツ振興センターの後遺障害等級

学校管理下における事故や登下校中の事故によって腰椎圧迫骨折を負い、治療・リハビリの結果、腰部痛や腰部可動域制限等の症状が後遺症として残存してしまった場合、学校の災害共済給付に加入していれば、独立行政法人日本スポーツ振興センターの災害共済給付制度に定められている後遺障害見舞金支払請求ができる可能性があります。腰椎圧迫骨折の後遺症で認定される可能性がある後遺障害は、脊柱変形障害、脊柱運動障害、荷重機能障害、神経症状となります。以下、認定基準と合わせて詳しく見ていきましょう。
⑴脊柱変形障害
腰椎圧迫骨折では、骨が押し潰されることで脊柱の配列が崩れ、脊柱の変形障害を残す可能性があります。この変形は、身体を側方から見た際に背中が湾曲する「後彎」や、正面から見た際に体幹が左右に湾曲する「側彎」として現れることが多いです。このような変形が進行すると、体のバランスが取りにくくなり、姿勢の悪化や周囲の筋肉への負担を引き起こし、腰椎の体幹支持機能にも支障をきたすこととなります。
脊柱の変形障害について、スポーツ振興センターの後遺障害等級では3つの等級が定められています。なお等級判断にあたっては、XPやCT画像又はMRI画像により腰椎圧迫骨折が確認できることを前提としたうえで、脊柱の後彎又は側彎の程度について評価がなされることとなります。
①第6級の5 著しい脊柱変形障害
「脊柱に著しい変形を残すもの」に該当すると認められた場合には、第6級の5が認定されます。
具体的な認定基準は次のとおりです。なお、支給される障害見舞金は1510万円(通学中及びこれに準ずる場合の金額は755万円)です。
a 脊椎圧迫骨折等により2個以上の椎体の前方椎体高が著しく減少し、後彎が生じているもの。
b 脊椎圧迫骨折等により1個以上の椎体の前方椎体高が減少し、後彎が生ずるとともに、コブ法による側彎度が50度以上となっているもの。
②準用第8級 中程度の脊柱変形障害
「脊柱に中程度の変形を残すもの」に該当すると認められた場合には、準用等級として準用第8級が認定されます。
具体的な認定基準は次のとおりです。なお、支給される障害見舞金は740万円(通学中及びこれに準ずる場合の金額は370万円)です。
a 脊椎圧迫骨折等により1個以上の椎体の前方椎体高が減少し、後彎が生じているもの。
b コブ法による側彎度が50度以上であるもの。
c 環椎又は軸椎の変形・固定(環椎と軸椎との固定術が行われた場合を含む)により、60度以上の回線位となっているもの。
d 環椎又は軸椎の変形・固定(環椎と軸椎との固定術が行われた場合を含む)により、50度以上の屈曲位又は60度以上の進展位となっているもの。
e 環椎又は軸椎の変形・固定(環椎と軸椎との固定術が行われた場合を含む)により、側屈位になっており、XP写真等により矯正位の頭蓋底部の両端を結んだ線と軸椎下面との平行線が交わる角度が30度以上の斜位となっていることが確認できるもの。
③第11級の7 単なる脊柱変形障害
「脊柱に変形を残すもの」に該当すると認められた場合には、第11級の7が認定されます。
具体的な認定基準は次のとおりです。なお、支給される障害見舞金は310万円(通学中及びこれに準ずる場合の金額は155万円)です。
a 脊椎圧迫骨折等を残しており、そのことがXP写真等により確認できるもの。
b 脊椎固定術が行われたもの。
c 3個以上の脊椎について、椎弓切除術等の椎弓形成術を受けたもの。
ご覧いただいて分かるように、第11級7号は、腰椎圧迫骨折はあるものの後彎や側彎の残存がない場合に認定される等級となります。
⑵腰部の脊柱運動障害
腰椎圧迫骨折の後遺症としてしばしば見られるのが、脊柱の運動障害です。腰椎圧迫骨折により、腰部の可動域制限が残存した場合に認定されます。
①第6級の5 著しい脊柱運動障害
次のa~cのいずれかにより、頸部部及び胸腰部が強直して可動域制限が残存した場合、「脊柱に著しい運動障害を残すもの」として第6級の5が認定されます。支給される障害見舞金は1510万円(通学中及びこれに準ずる場合の金額は755万円)です。
なお、「強直」とは「関節の完全強直又はこれに近い状態にあるもの」をいい、「これに近い状態」とは、参考可動域角度の10%程度以下に制限されていることを意味します。
a 頸椎及び胸腰椎のそれぞれに脊椎圧迫骨折等が存しており、そのことがX線写真等により確認できるもの
b 頸椎及び胸腰椎のそれぞれに脊椎固定術が行われたもの
c 項背腰部軟部組織に明らかな気質的変化が認められるもの
注意点として、この等級は、腰椎圧迫骨折のみでは認定されることは基本的にはありません。なぜならば、「頸部及び胸腰部が強直」とあるように、頸部と胸腰部の両方に可動域制限が残存していることが要件となっているためです。たとえば、学校での事故によって第5頸椎骨折と第1腰椎骨折を負い、頸部と腰部に可動域制限が残存したといったケースであれば認定される可能性があります。
②第8級の2 単なる脊柱運動障害
次のa~cのいずれかにより、腰部の可動域角度が参考可動域角度の2分の1以下に制限された場合、「脊柱に運動障害を残すもの」として第8級の2が認定されます。支給される障害見舞金は740万円(通学中及びこれに準ずる場合の金額は370万円)です。
a 胸腰椎に脊椎圧迫骨折等を残しており、そのことがエックス線写真等により確認できるもの
b 胸腰椎に脊椎固定術が行われたもの
c 項背腰部軟部組織に明らかな気質的変化が認められるもの
第8級の2は、第6級の5とは異なり、腰椎圧迫骨折のみでも認定される可能性があります。また、等級判断にあたっては、変形障害と同様にXPやCT画像又はMRI画像により腰椎圧迫骨折等が確認できることが前提となっています。そのため、疼痛が原因となって生じている運動障害(痛みがするので動かせないようなもの)については、脊柱運動障害としては認定されず、局部の神経症状として別途評価がなされます。
⑶荷重機能障害
荷重機能障害もまた、腰椎圧迫骨折の後遺症としてみられることがあります。前述のとおり、腰椎は腰に位置する骨であり、上半身の荷重や体幹を支える役割も担っている重要な骨です。この部位の骨折によって、脊柱全体の動きに制限が生じることがあります。その結果、背骨にかかる荷重をうまく分散できなくなり、脊柱の体幹支持機能の低下が生じたり、立位や歩行時に痛みを伴うことが増える点も挙げられます。
スポーツ振興センターの後遺障害等級表には荷重機能障害の等級が定められていないため、脊柱の運動障害に準ずるものとして等級認定されることとなります。詳しくは次の①~②のとおりです。
①準用第6級
荷重機能障害の原因が明らかに認められる場合であって、頸部及び腰部の両方の保持に困難があり、常に硬性補装具の着用を要するものである場合に認定されます。要件上、腰部だけでなく頸部の保持の困難も要求されるため、腰椎圧迫骨折のみを受傷した場合に認定される可能性は基本的にはないと考えられます。
②準用第8級
荷重機能障害の原因が明らかに認められる場合であって、頸部又は腰部のいずれかの保持に困難があり、常に硬性補装具の着用を要するものである場合に認定されます。こちらは、腰椎圧迫骨折による腰部の保持困難があり、常時硬性補装具の着用が必要である旨を立証できれば、認定される可能性があります。
⑷腰痛や神経症状などの神経への影響
腰椎圧迫骨折では、腰痛などの慢性的な痛みが後遺症として残ることがあります。特に骨折による脊柱の変形が神経を圧迫する場合、圧迫された神経の支配領域に痛みやしびれなどの神経症状が発症する可能性もあります。症状としては、これらの神経障害は、腰椎圧迫骨折の重大な後遺症であり、後遺障害等級第12級の13または第14級の9として認定されるケースが見られます。なお、第12級の13が認定された場合に支給される障害見舞金は225万円(通学中及びこれに準ずる場合の金額は112万5000円)、第14級の9が認定された場合に支給される障害見舞金は88万円(通学中及びこれに準ずる場合の金額は44万円)です。
おわりに

スポーツ振興センターに正しく後遺症の状態を認識してもらい、適切な後遺障害等級審査を行ってもらうためには、
障害見舞金支払申請時に必要な後遺障害診断書に症状や医学的所見をもれなく書いてもらったり、
医学的に後遺症を証明するような所見を得るために必要な検査を受けたりと、重要なポイントが数多くあります。
したがって、スポーツ振興センターに申請を行う段階から、等級獲得に向けて押さえるべきポイントを把握したうえで用意を行うことが望ましく、
そのためには後遺障害に関する経験や専門的知識が不可欠だといえます。
弁護士法人小杉法律事務所では、学校事故被害者専門弁護士による無料相談を実施しております。
学校事故によりお子さんが腰椎圧迫骨折を負った場合や、懸命の治療をしたが後遺症が残ってしまった場合など…
お子さんの様子を見るだけで、親御さんとしてはとてもつらい心境かと思います。
そのような中で、損害賠償請求のことや後遺障害のことまで考えるとなると、精神的・時間的負担も決して小さくないでしょう。
学校事故による被害でお悩みの方は、ぜひ一度、弁護士法人小杉法律事務所の無料相談をお受けください。
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