学校事故の解決実績

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学校事故で子供の顔に傷跡|賠償金はいくら?被害者専門弁護士が解説

Cさん 女性・小学生

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学校いじめ

よく、「目に入れても痛くない」とさえ例えられる子供。

そんなかわいくてたまらないお子様が怪我をしたり、後遺症が残ってしまったりすることは、親としては絶対に避けたいことです。

しかし、不幸にもお子様に後遺症が残ってしまった時に、親御さんができる事は何でしょうか。

子どもが少しでも後遺症が原因で日々の生活に困ったり、落ち込んだりしないようサポートしていくことはもちろん大切ですが、適切な後遺障害等級を認定してもらい、適切な損害賠償金を受け取ることも大切です。それは、単純に賠償金を受け取ることで、子どものサポートをより手厚くできるという意味もありますが、後遺障害等級が適切に認定されるということは、「自分の身体に残っている痛みや辛さが、他人に分かってもらえなかった」という子どもの不満を取り除く一つのカギになります。

このページでは、通学中の事故により、顔面に傷跡(醜状)が残ってしまったCさん(女性・小学生)の事例を紹介します。

Cさんは当初、スポーツ振興センターへの障害等級申請で非該当の結果を受けてしまいました。後述するように、醜状障害の認定は難しく、また後遺障害等級として認定されても将来における損失が無いとされてしまうことがあります。

そこで、Cさんの親御さんは学校事故被害専門の弁護士に相談し、弁護士の介入により後遺障害等級12級の認定と、将来における損失の賠償金を受け取ることができました。

以下では、学校事故被害専門の弁護士がいかにしてCさんの後遺障害を認めさせ、いくらの賠償金を獲得したのかを、解説を交えて紹介していきます。

 

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事案の概要

事故発生の状況と治療経過

Cさん(女性・小学生)は、小学校での授業を終え、同級生と仲良く下校していましたが、その途中で事故は起きました。

同級生の一人が、カバンを振り回して遊んでいたところ、そのカバンがCさんの顔に当たってしまったのです。

この事故によりCさんは、鼻の骨を骨折するなどの怪我をしてしまいました。

Cさんは約半年間の治療を余儀なくされました。その治療の中で、鼻骨骨折整復固定手術を受けたので、鼻の変形等は残りませんでしたが、鼻の頭に白い痕が残ってしまいました。

鼻に傷を負ってしまったことにより、皮膚組織が破壊され、その結果色が抜け落ちてしまい、白斑という白い痕になってしまったのです。

後遺障害は非該当の判断→弁護士に法律相談

Cさんのご両親は、スポーツ振興センターへ後遺障害申請を行いましたが、結果は非該当。

Cさんの鼻に残った瘢痕は、後遺障害ではないと判断されたのです。

Cさんもご両親も、当然この結果には納得いきません。そこで、Cさんのご両親は、学校事故被害専門弁護士を探して相談してみることにしました。

 

後遺障害等級認定(非該当→弁護士介入で12級)

障害診断書学校事故

学校事故における醜状障害の認定基準

学校事故により残存した後遺障害の判断は、独立行政法人日本スポーツ振興センターにおいて行われます。

独立行政法人日本スポーツ振興センターとは、「スポーツの振興と児童生徒等の健康の保持増進を図るため、その設置するスポーツ施設の適切かつ効率的な運営、スポーツの振興のために必要な援助、学校の管理下における児童生徒等の災害に関する必要な給付その他スポーツ及び児童生徒等の健康の保持増進に関する調査研究並びに資料の収集及び提供等を行い、もって国民の心身の健全な発達に寄与すること」(日本スポーツ振興センターホームページより引用)を目的として設立された法人です。

スポーツ振興センターは、独立行政法人日本スポーツ振興センターに関する省令に定められている障害等級表に基づいて後遺障害の等級を判断し、障害見舞金の金額を決定します。

身体に傷跡が残ってしまうという後遺障害(醜状障害)は、障害等級表には以下の定めがあります。

なお、ここでいう醜状とは、「人目につく程度以上」のものとされています。

  • 第7級の12 外貌に著しい醜状を残すもの              障害見舞金1270万(635万)円
  • 第9級の16 外貌に相当程度の醜状を残すもの            障害見舞金590万(295万)円
  • 第12級の14 外貌に醜状を残すもの                 障害見舞金225万(112万5000)円
  • 第14級の4 上肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの  障害見舞金88万(44万)円
  • 第14級の5 下肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの  障害見舞金88万(44万)円

外貌とは、「頭部・顔面部・頚部のごとく、上肢及び下肢以外の日常露出する部分」(独立行政法人日本スポーツ振興センター編「災害共済給付ハンドブック」より引用)をいいます。

また、()内の金額は、通学中(及びこれに準ずる場合)の障害見舞金の額です。

今回Cさんは鼻(=顔面部)に白斑が残ってしまっているので、該当する等級は第7級・第9級・第12級のいずれかということになります。

これらの等級のどれに該当するかは、基本的に醜状の大きさによって決まり、顔面部の場合には、

卵以上の大きさの瘢痕であれば第7級が、5㎝以上の線状痕であれば第9級が、10円硬貨以上の大きさの瘢痕又は3㎝以上の線状痕であれば第12級がそれぞれ認定されます。

ここに記載はされていませんが、火傷治ゆ後の黒褐色変色又は色素脱失による白斑等も、「醜状」に含まれるとされています。

 

一度目の申請は非該当

スポーツ振興センターでの後遺障害の認定は、基本的に医師に書いて頂いた障害診断書をもとに判断されます。

これは、交通事故における自賠責損害調査事務所での認定、労災事故における労働基準監督署での認定と同じです。

基本的には書面での審査になりますので、障害診断書にどういった記載をされるかが非常に重要になるわけです。

ここに、Cさんのご両親が行った一度目の申請が非該当になった理由があります。医師が書いてくれた障害診断書には、白斑の長さが2.5㎝と記載されていたのです。第12級の認定基準は10円硬貨以上の大きさ又は3㎝以上ですから、等級が認定される醜状の大きさには足りません。

当然と言えば当然ですが、結果は非該当。Cさんのご両親は弁護士に相談します。

弁護士は、Cさんのご両親の相談を受け、スポーツ振興センターに、非該当の認定に対する不服審査請求をすることにしました。

 

弁護士の介入①:後遺障害診断書の修正

Cさんのご両親から相談を受けた弁護士は、まず障害診断書の記載と、障害等級表、そしてCさんの実際のお顔に残ってしまった白斑を見て、ある事に気が付きます。

それは、Cさんの鼻の白斑は、障害診断書の記載(2.5㎝)より長いということです。

確かに、直線的な長さは障害診断書の記載通り2.5㎝くらいでした。しかし、鼻に残った傷痕を直線的な長さで評価するというのは不適切です。

なぜなら、鼻は平面的でなく、立体的ですから、鼻の傷痕というのは鼻の高さの分も合わせて大きさを評価しなければなりません。

上の図のように、メジャーを使用して鼻の高さを踏まえ、Cさんの鼻に沿うようにして白斑の長さを測ったところ、4㎝になりました。

このように、後遺障害等級認定の場においては、直線的な長さではなく実際の長さを用いることを医師に説明したところ、障害診断書上の記載を、2.5㎝→4㎝に変更してくださいました。

 

弁護士の介入②:意見書&写真の提出

スポーツ振興センターは、「児童生徒等」の、「学校の管理下」における災害においてのみ、後遺障害等級の判断を行っているという都合上、交通事故の後遺障害等級の判断をする自賠責損害調査事務所や、労災事故の後遺障害等級の判断をする労働基準監督署と比較すると扱っている件数が多くありません。

したがって、後遺障害等級の判断のエキスパートのような職員が少なく、基準を誤った形で提供され、適切な等級が認定されないという事も考えられます。

特に、醜状障害というのは上で述べたように、測り方によって等級の該当性が変わったりと、かなり複雑で難しい判断になります。交通事故の場合だと、自賠責損害調査事務所の調査員と実際に面談し、醜状の状況を見てもらうことが多いのですが、スポーツ振興センターにおける調査ではそのようなことは少ないです。

つまり、学校事故による醜状障害で等級を認定してもらうためには、どこをどのようにして測り、その結果どの認定基準に該当するのかということを詳しく説明することが重要で、ここに、学校事故被害専門の弁護士が介入する最大のメリットがあります。

学校事故被害専門の弁護士は、こういった複雑な等級の認定基準についても熟知していますから、説得力のある意見書を書くことができました。

また、説得力を更に増すために、Cさんの鼻に残る白斑を実際にメジャーで測定している写真も付けて不服審査請求を行いました。

その結果当初は非該当という判断だった醜状障害が、「第12級の14 外貌に醜状を残すもの」として認定を受けました。

醜状障害の逸失利益性

逸失利益の計算方法

無事、不服審査請求により12級を獲得し、スポーツ振興センターから障害見舞金として112万5000円の支払いを受けることができました。

しかしながら、お子さんの顔に一生残る傷跡が付いてしまったという事実からすれば、安く感じますね。

今回Cさんが怪我をしてしまった原因は、同級生がカバンを振り回していたことですが、このような場合は、その加害者(正確には未成年者なので保護監督責任を負う加害者の両親)に対して、生じた損害の賠償を請求することができます。スポーツ振興センターからの障害見舞金とは別です。

請求できる損害は、大きく分けて①積極損害(治療費や通院交通費など、怪我をしたことで支出することになった損害)、②消極損害(休業損害や逸失利益など、怪我をしたことにより働けなくなった部分の損害)、③慰謝料(入通院を余儀なくされたこと、後遺障害が残ったことの精神的苦痛に対する慰謝料)の3つに分けられます。

積極損害は実際に支出していますから、基本的には争いになることはありません。

慰謝料に関しても、入通院慰謝料や後遺症慰謝料は、入通院の日数や残存した後遺障害によって裁判上の基準が定立されていますから、大きく争うポイントでもありません。

最も争いになるのは消極損害の部分です。今回Cさんは小学生で、働いていませんから休業損害が発生しないのは、被害者も加害者も合意しているので争いはありません。

ですが、逸失利益の部分は争いが生じるのは避けられないといえます。それは、醜状障害という後遺障害の特殊性が原因です。

 

そもそも逸失利益とは、後遺障害が残存したことにより将来にわたって労働能力が制限され、そのために本来後遺障害が残存しなかった場合に稼げていたはずのお金が稼げなくなるという損害です。

具体的な計算は、年収×労働能力喪失率×労働能力喪失期間(に対応するライプニッツ係数)で算出されます。

労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数については、ここでのメインの議題ではないので簡単な説明に留めます。

ライプニッツ係数とは、逸失利益に対する賠償金を法定利率で運用した場合に生じる利息分を控除するための係数です。

逸失利益の計算方法を見たところで、醜状障害の労働能力喪失率を見ていきましょう。

醜状障害の労働能力喪失率とは?

醜状障害によって労働能力を喪失するとはどう定義することができるでしょうか?

例えば事故などで片腕を失ったなどという場合、両腕が使えていた頃に比べると作業に困難を強いられるのは想像に難くありません。もちろんご本人の努力で、片腕を失う前と変わらないぐらいの働きができる方もいらっしゃるとは思いますが、一般的には両腕が使える頃より労働能力は喪失すると考えるべきです。

では、顔に消えない傷跡が残ってしまったという場合、労働能力は喪失したといえるでしょうか?これが後遺障害における醜状障害の特殊性です。

被害者の側としては、もちろん労働能力は喪失したといえると主張すると思います。特に小さなお子様の場合には、顔に傷が残り、それがコンプレックスとなってふさぎ込んでしまったり、もしかしたら同級生からのいじめの原因になり、学校に行けなくなったりして、将来働けなくなってしまう可能性もあります。そのような場合、当然労働能力は喪失したといえると主張すると思います。

一方加害者の側からすれば、別に作業効率が悪くなったりするわけではない。化粧をすれば隠すこともできるし、傷が残り、それがコンプレックスとなり、ふさぎ込んでしまい、将来働けなくなるというのは因果関係が薄すぎるという主張がされると思います。

実際の裁判例も、醜状障害の逸失利益は肯定例も否定例もいくつも存在します。

肯定例の多くは、モデルなど容姿を売りにして仕事をされる方のものです。Cさんはまだ小学生で、今後どのような職に就くかも決まっていませんし、大きくなるにつれて傷跡が目立たなくなるという可能性もあるので非常に難しいです。

しかしながら、当事務所において調査したところ、治療終了時12歳で、鼻付近に醜状障害が残ってしまった女子小学生につき、逸失利益を認めた(=労働能力の喪失)を認めた裁判例を見つけ、それをもとにCさんの場合も労働能力が喪失したといえると主張しました。

その結果加害者側も醜状障害による労働能力の喪失を認め、逸失利益を獲得することができました。

学校事故における加害者の責任

加害者が未成年の場合、誰が責任を負うのか?

今回Cさんは、「通学中」に、「同級生」によって怪我をさせられています。

当然「同級生」が加害者になりますが、民法第712条の規定により本件の加害者である「同級生」は責任を負いません。

民法第712条の規定は、「未成年者は、他人に損害を加えた場合において、自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えていなかったときは、その行為について賠償の責任を負わない。」というものです。

ではこのような場合は誰も責任を負うことが無いのかというともちろんそういう訳ではなく、監督義務者が責任を負います。今回は「同級生」の親という事になります。

加害者の親が無資力の場合、泣き寝入りするしかない?

仮に加害者の親に加害行為の責任と、損害賠償の義務があることを認めさせることができても、加害者の親が無資力な場合は、結局被害者側が泣き寝入りしなければならないということになります。

ですが、無資力のように見えて無資力ではない場合があります。それが、任意保険がある場合です。

もしもの交通事故のために加入している任意保険が、加入内容によっては学校事故の場合にも使えることもあります。

今回の場合、加害者側が加入している任意保険を使えることが判明し、賠償金を保険会社から払ってもらうことができました。

 

示談交渉

示談交渉

上で見たように、今回加害者側が加入している任意保険会社から支払いを受けることになったため、示談交渉も任意保険会社担当者と行うことになりました。

任意保険会社の基準は基本的に裁判基準を大きく下回ることが多いのですが、交渉により多くの費目で裁判基準や、裁判基準を超える額の認定を受けました。

最終的には、スポーツ振興センターから既に受領している障害見舞金を除き、約400万円の損害賠償金を獲得することができました。

 

依頼者の声(Cさんのご両親)

依頼者の声

娘の顔に傷がついてしまい、傷跡が消えることなく残ってしまいました。

病院の先生に障害診断書を書いてもらい、スポーツ振興センターに障害等級の申請をしてみましたが、結果は非該当でした。

大切な娘の顔に消えない傷が残ったのに、それは後遺症ではないと判断されたことに納得がいかず、これを覆してくれる弁護士を探していたところ、小杉弁護士に出会いました。

小杉弁護士は不服申し立てをしてみましょうと言ってくださり、病院に何度も足を運んでお医者さんの意見を取り付けてくださいました。

それだけでなく、弁護士としての意見書もつけて不服申し立てをしてくださり、後遺障害12級に判断が変更になりました。

また、その後の賠償額の交渉もしてくださいました。

小杉弁護士に依頼する前は、後遺障害も認められず、泣き寝入りするしかないのかという不安や怒りがありましたが、後遺障害が認められただけでなく加害者側との交渉までして頂いて、本当に助かりました。小杉弁護士に頼んでよかったと思います。

弁護士小杉晴洋によるコメント:スポーツ振興センターに対する障害等級の申請は被害者側専門の弁護士に任せましょう

交通事故の後遺症については自賠責保険が、労災事故の後遺症については労働局が審査をしますが、学校事故についてはスポーツ振興センターが障害等級の審査をします。

自賠責保険や労働局には、後遺障害等級専門の部門があったり、顧問医による医学的判断がなされますが、スポーツ振興センターの障害等級の認定は、これらと比べると専門性が劣り、障害等級の要件を理解していないのではないかと思われる認定理由が出されることもあります。

ですので、スポーツ振興センターに対する障害等級の申請は、被害者側専門の弁護士が、どのような障害等級になぜ該当するのかを丁寧に説明してもらいながら行うことが有益です。

学校事故により後遺症が残ってしまったお子様をお持ちの親御さんは、まずは被害者側専門の弁護士に相談されることをおすすめします。

無料で法律相談を行っていますので、お気軽にお問い合わせください。

 

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この記事の監修者弁護士

小杉 晴洋 弁護士
小杉 晴洋

被害者側の損害賠償請求分野に特化。
死亡事故(刑事裁判の被害者参加含む。)や後遺障害等級の獲得を得意とする。
交通事故・学校事故・労災・介護事故などの損害賠償請求解決件数約1500件。

経歴
弁護士法人小杉法律事務所代表弁護士。
横浜市出身。明治大学法学部卒。中央大学法科大学院法務博士修了。

所属
横浜弁護士会(現「神奈川県弁護士会」)損害賠償研究会、福岡県弁護士会交通事故被害者サポート委員会に所属後、第一東京弁護士会に登録換え。