学校事故 障害等級の解説

醜状の障害

顔面部の醜状障害の後遺障害等級【学校事故被害者専門弁護士解説】

1.顔の醜状障害の後遺障害等級について

顔の醜状障害は、顔面部に残った醜状の大きさによって判断されます。

また、障害認定は、原則として治癒から6か月経過後の時点における醜状の程度によって行います。

独立行政法人日本スポーツ振興センターの災害共済給付制度に定められている障害見舞金支払対象である後遺障害の等級は以下のとおりです。

第7級の12

「外貌に著しい醜状を残すもの」は、第7級の12が認定されます。支給される障害見舞金は1270万円(通学中及びこれに準ずる場合は635万円)です。

顔面部については、ほぼ鶏卵大面以上の瘢痕又はほぼ10円銅貨大以上の組織陥没があり、それが人目につく程度以上のものである場合に「外貌に著しい醜状を残すもの」として第7級の12が認定されます。

第9級の16

「外貌に相当程度の醜状を残すもの」は、第9級の16が認定されます。支給される障害見舞金は590万円(通学中及びこれに準ずる場合は295万円)です。

顔面部の長さほぼ5センチメートル以上の線状痕で、人目につく程度以上のものがある場合に認定されます。

第12級の14

「外貌に醜状を残すもの」は、第12級の14が認定されます。支給される障害見舞金は225万円(通学中及びこれに準ずる場合は112万5000円)です。

顔面部に、ほぼ10円硬貨大以上の瘢痕又は長さほぼ3センチメートル以上の線状痕を残すものがあり、それが人目につく程度以上のものである場合に認定されます。なお、乳幼児や低学年の児童の場合、線状痕の長さが2.5センチメートル以上で第12級とされています

2.等級認定の注意点

1では基本的な等級認定基準を説明しましたが、これにあわせていくつか注意すべきポイントがありますので、以下解説していきます。

⑴人目につく程度の要件

醜状障害の等級が設定された目的として、醜状痕が残存したことによる精神的負担や、そのために生活範囲がせばめられてしまうことが考慮されています。したがって、醜状障害の認定にあたっては、人目につく程度以上の醜状痕が残存していることが重要となります。そのため、面積や長さでみれば等級に該当するような瘢痕や線状痕又は組織陥没が残存したとしても、眉毛や頭髪等に隠れてしまう部分については、醜状として取り扱われません

⑵相隣接要件

2個以上の瘢痕又は線状痕が相隣接し、又は相まって1個の瘢痕又は線状痕と同程度以上の醜状を呈する場合は、それらの面積、長さ等を考慮して等級認定がなされます。ここでいう「相隣接し、又は相まって」とは、複数の瘢痕や線状痕が、およそ1センチメートル以内の間隔で複数残存している状態を指します。たとえば、左頬に、長さ2センチメートルの線状痕が3つ残存しており、それぞれの線状痕の間隔が0.5センチメートルだった場合には、「相隣接し、又は相まって1個の線状痕と同程度以上の醜状を呈する場合」に該当するとして、3つの線状痕の長さの合計値である6センチメートルの線状痕として考えることとなるため、「外貌に相当程度の醜状を残すもの」として第9級の16が認定されることとなります。

⑶顔面神経麻痺

顔面神経麻痺は、通常は神経系統の機能障害に該当しますが、その結果として現れる「口のゆがみ」については、単なる「醜状」として扱います。また、閉瞼不能(顔面神経麻痺によりまぶたを閉じることができなくなった状態)は、眼瞼の障害として扱われます。

⑷眼瞼の欠損障害

眼瞼の欠損障害については、別途眼瞼の障害として第9級の4、第11級の3、第13級の4、第14級の1の4つの等級が定められていますが、等級認定にあたっては、欠損障害について定められている等級と、醜状に関する等級のうち、いずれか上位の等級が認定されます

⑸耳殻の欠損障害

耳殻の欠損障害についても、別途耳殻の障害として第12級の4が定められています。そのため、等級認定にあたっては、眼瞼の欠損障害と同様に、欠損障害について定められている等級と、醜状に関する等級のうち、いずれか上位の等級が認定されます。なお、耳殻の欠損に係る醜状について、耳殻軟骨部のほぼ2分の1以上を欠損した場合は「著しい醜状」として第7級、耳殻軟骨部の一部を欠損した場合は単なる「醜状」として第12級とする取扱いがなされます。

⑹鼻の欠損障害

鼻の欠損障害についても、別途鼻の欠損・機能障害として第9級の5が定められています。そのため、等級認定にあたっては、眼瞼の欠損障害や耳殻の欠損障害と同様に、欠損障害について定められている等級と、醜状に関する等級のうち、いずれか上位の等級が認定されます。なお、鼻の欠損に係る醜状について、鼻軟骨部の全部または大部分を欠損した場合は「著しい醜状」として第7級、一部または鼻翼を欠損した場合は単なる「醜状」として第12級とする取扱いがなされます。

⑺火傷治癒後の黒褐色変色や色素脱失等による白斑等について

これらは、その変色や白斑等が、永久的に残ると認められ、かつ、人目につく程度以上のものである場合に、単なる「醜状」として第12級とする取扱いがなされます。

 

スポーツ振興センターにきちんと後遺症の状態を認識してもらい、適切な後遺障害等級審査を行ってもらうためには、

障害見舞金支払を申請する際に必要な後遺障害診断書に、症状や医学的所見をもれなく医師に書いてもらったり、後遺障害診断書に加えてさまざまな書類を準備したり、医学的に後遺症を証明するような所見を得るために必要な検査を受けたりと、重要なポイントが数多くありますとりわけ醜状の障害については、残存している瘢痕や線状痕の幅、長さ、面積、位置など、その程度や状態を正確に書いてもらうことが何より肝要となります

したがって、障害見舞金支払の申請をする段階から、等級獲得に向けて押さえるべきポイントを把握したうえで用意をしていくことが望ましく、そのためには後遺障害に関する経験や専門的知識が不可欠といえます

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この記事の監修者弁護士

小杉 晴洋 弁護士
小杉 晴洋

被害者側の損害賠償請求分野に特化。
死亡事故(刑事裁判の被害者参加含む。)や後遺障害等級の獲得を得意とする。
交通事故・学校事故・労災・介護事故などの損害賠償請求解決件数約1500件。

経歴
弁護士法人小杉法律事務所代表弁護士。
横浜市出身。明治大学法学部卒。中央大学法科大学院法務博士修了。

所属
横浜弁護士会(現「神奈川県弁護士会」)損害賠償研究会、福岡県弁護士会交通事故被害者サポート委員会に所属後、第一東京弁護士会に登録換え。