目の障害
外傷性散瞳
1.外傷性散瞳とは
散瞳(病的)は、一般に、瞳孔の直径が開大して対光反応が消失又は減弱するものをいいます。外傷性散瞳は読んで字のごとく、事故などによる外傷を原因として発生した散瞳を指します。
人間の目には、瞳孔、虹彩という部位があります。瞳孔はいわば目の開口部であり、目に光を入れる部分になります。虹彩は、外界から目に光が入ってくるときに、その環境の明暗などに応じて瞳孔の大きさを調節する部位になります。明るい場所では瞳孔が小さくなるため入ってくる光の量は少なく、反対に暗い場所では少しでも光を取り入れるために瞳孔が大きくなります。こうした機能があるからこそ、明暗様々な場所での活動が可能となります。
しかし、眼球打撲などの外傷により、瞳孔散大筋や瞳孔括約筋などの光の調節に関わる組織を損傷すると、瞳孔を小さくする動きが鈍ったり、瞳孔が開いたままになってしまいます。これが外傷性散瞳です。このため、通常に比してまぶしく感じるようになったり、目のピント調節機能が鈍る症状が現れます。
2.後遺障害としての取扱いおよび後遺障害等級
日本独立行政法人スポーツ振興センターの災害共済給付制度に定められている障害見舞金の支払いに関する障害等級表において示される眼の障害の他に、スポーツ振興センターは外傷性散瞳についても準用等級を定め、その後遺障害を障害見舞金給付の対象としています。
第11級準用 | 両眼の瞳孔の対光反射が著しく障害され、著明な羞明を訴え学校生活に著しく支障をきたすもの |
第12級準用 | 両眼の瞳孔の対光反射はあるが不十分であり、羞明を訴え学校生活に支障をきたすもの |
第12級準用 | 1眼の瞳孔の対光反射が著しく障害され、著明な羞明を訴え学校生活に著しく支障をきたすもの |
第14級準用 | 1眼の瞳孔の対光反射はあるが不十分であり、羞明を訴え学校生活に支障をきたすもの |
外傷性散瞳が生じている眼が1眼であるか両眼であるか、対光反射および羞明の程度に応じて4つの準用等級が認定されます。
対光反射とは、目に光刺激を与えたときに瞳孔が小さくなる反応をいいます。
「羞明」は普段聞き慣れない言葉ですが、要するに「まぶしい」ことをいいます。
3.後遺障害等級認定のポイント
ポイントとなるのは、①散瞳の症状が残存していること、②外傷と散瞳に因果関係が認められること、の2点になります。
①について、散瞳の症状を確認するために用いられるのが、ハロゲン・ペンライトを用いた対光反射検査になります。
対光反射検査は、やや暗い場所でペンライトの光を斜めから瞳孔に当て、瞳孔の収縮の状況を確認するものです。
正常な瞳孔径の数値がおおむね2.5㎜~4.0㎜程度であり、暗い場所で瞳孔が開いた状態でもこの数値内に収まることが多いです。
しかし、症状が残存している場合は、瞳孔径が正常値に収まらなくなり、おおむね5.0㎜以上とみられる場合には散瞳と考えられます。
②について、外傷から散瞳の症状が残存するまでの機序が認められる必要があります。
たとえば野球部の部活動中に飛んできたボールが生徒の目に直撃し、眼窩底骨折などで視神経を損傷したなど、目や目の周りの組織を負傷し散瞳が残った場合には因果関係が認められる可能性があります。
スポーツ振興センターにきちんと後遺症の状態を認識してもらい、適切な後遺障害等級審査を行ってもらうためには、
障害見舞金支払を申請する際に必要な後遺障害診断書に、症状や医学的所見、事故と後遺症の因果関係などをもれなく医師に書いてもらったり、医学的に後遺症を証明するような所見を得るために必要な検査を受けたりと、重要なポイントが数多くあります。
したがって、障害見舞金支払の申請をする段階から、等級獲得に向けて押さえるべきポイントを把握したうえで用意をしていくことが望ましく、そのためには後遺障害に関する経験や専門的知識が不可欠といえます。
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