脳の障害
高次脳機能障害の等級と金額|医師監修記事・学校事故専門の弁護士法人小杉法律事務所

本稿では、学校事故(学校管理下での事故や登下校中の事故)で高次脳機能障害が残存した場合に、スポーツ振興センターで認定されうる等級や慰謝料等の金額について整理しています。
なお、医学的事項につきましては医学博士早稲田医師(日本精神神経学会専門医・指導医、日本臨床神経生理学会専門医、日本医師会認定産業医)にご監修をいただいております。
- 高次脳機能障害とは
- 高次脳機能障害の症状について
- 高次脳機能障害にて認定されうる等級
- ⑴1級の3 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの
- ⑵第2級の3 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの
- ⑶第3級の3 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの
- ⑷第5級の2 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの
- ⑸第7級の4 神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの
- ⑹第9級の10 神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの
- ⑺第12級の13 局部に頑固な神経症状を残すもの
- ⑻第14級の9 局部に神経症状を残すもの
- スポーツ振興センターの等級認定システム
- 高次脳機能障害における等級認定のポイントとは
- 高次脳機能障害における等級認定申請時に必要な資料とは?
- 高次脳機能障害の等級認定により支払われる障害見舞金の金額は?
- 高次脳機能障害にて等級認定を受けた場合の損害賠償金額は億単位になることもあります
- 学校事故での高次脳機能障害の損害賠償金額を高める上で注目すべき損害賠償費目について
- 高次脳機能障害等級認定に関するその他の注意点
- 高次脳機能障害に関する等級や賠償金額については専門の弁護士に相談を
高次脳機能障害とは
⑴そもそも「高次脳機能」とは?
「高次脳機能障害」と聞いたとき、何となく重そうな障害であることはイメージできても、その具体的な内容についてはよく知らない人もまだまだ少なくないのではないでしょうか。そのため、言葉の意味をまずは見ていきましょう。
「高次脳機能」とは、言語、行為、認知、記憶、注意、判断など、人間が社会生活を営む中で学習し身につける機能を意味します。すなわち、言語を覚えて他者とコミュニケーションをとったり、空間や対象を認知したり、事柄を記憶したり、スケジュールを組み立てて実行したり、周囲の事物に注意を払い危機管理を行ったり、論理的に思考したり等の、生来体得しているものではなく、社会で成長する中で徐々に育まれてくる力のことです。これに対して、生き物として生きていくにあたり不可欠な、生命の基本を司る基本的脳機能のことを低次脳機能といい、「食べる」、「飲む」などの生命維持に欠かせない機能はこちらに含まれます。
⑵高次脳機能障害とは
前述の高次脳機能の意味が分かれば、高次脳機能障害とはどのような障害であるかもおのずと見えてくるかと思います。高次脳機能障害は、頭部外傷や病気等を原因として脳に器質的病変を来したことにより生じる、言語・行為・認知・記憶・注意・判断などの機能についての障害ということです。
高次脳機能障害は、同じく中枢神経の傷病である脊髄損傷のように目立った身体障害が生じることは多くなく、外見的に障害が目立ちにくいため、「みえない障害」と呼ばれることもあります。くわえて、事故直後にすぐに症状が現れるというよりは、日常生活において次第に症状が現れてくることが多いです。そのため、症状が現れて始めてから高次脳機能障害と診断されるまでにタイムラグが生じることも往々にしてあります。
⑶高次脳機能障害の「行政的」定義
これまでに示した高次脳機能障害の定義は、学術的定義(医学における定義)になります。
他方、厚生労働省が示す高次脳機能障害の診断基準によれば、「行政的」定義における高次脳機能障害は以下2点を主要症状とするものであるとされています。
①脳の器質的病変の原因となる疾病の発症や事故による受傷の事実が確認されている
②現在、日常生活または社会生活に制約があり、その主たる原因が記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害などの認知障害である
これより、高次脳機能障害の診断にあたっては、脳自体(物理的意味での)に何らかの異常があることが必要とされているものといえます。
なお、厚生労働省によれば、高次脳機能障害者は推計約23万人存在するとされており、適切な支援が受けられない現況にあるとされています。
そうした状況を改善するため、令和8年4月1日には高次脳機能障害者支援法が施行され、高次脳機能障害者の生活全般にわたる支援を推進する動きが国を挙げて推し進められています。
高次脳機能障害の症状について

脳外傷による高次脳機能障害について、原因になる脳外傷は局所性脳損傷かびまん性脳損傷のいずれかとなります。
なお、びまん性軸索損傷は、びまん性脳損傷の中でも重度の損傷態様の一つであり、軸索という神経線維の損傷を広範囲に伴うものを指します(詳しくは後述しております。)。
⑴局所性脳損傷による巣症状
| 失語 | 脳の損傷が原因で、読む・書く・話す・聞くなどの言語機能が失われた状態です。前頭葉と側頭葉が関連します。 |
| 失行 | 運動麻痺や感覚障害がなく、記憶等も問題が無いにも関わらず、日常生活の様々な行為が損なわれます。頭頂葉が関連します。 |
| 失認 | 目は見えていて感覚に問題が無いにもかかわらず、眼に見たものを認識できない等の症状が生じます。側頭葉や後頭葉の損傷で生じます。 |
⑵びまん性軸索損傷による症状
| 記憶障害 | 昔のことが思い出せない、新しいことを覚えることができないなどの状態です。主な病巣は海馬などの大脳辺縁系と言われます(大脳辺縁系は脳の内側にありますので上のイラストに記載ありません。)。 |
| 注意障害 | 物事に集中できない、集中する持続力が低下する、周りに注意が払えないなどの状態です。主な病巣は前頭葉の前頭連合野と言われます。 |
| 遂行機能障害 | 物事を行うための段取りが悪かったり、臨機応変な対応ができず(こだわりが強くて予定外のことに想定できない)、物事をスムーズに行うことができない状態です。主な病巣は前頭葉の前頭連合野と言われます。 |
| 社会的行動障害 | 易怒性(すぐに怒る)、意欲がわかない、特定のものに固執するなどして社会でうまく生きていくことが阻害される状態です。主な病巣は前頭葉の前頭連合野と言われます。 |
高次脳機能障害にて認定されうる等級

脳外傷による高次脳機能障害について、独立行政法人日本スポーツ振興センターの災害共済給付に関する法令である独立行政法人日本スポーツ振興センター法施行令、独立行政法人日本スポーツ振興センターに関する省令及び独立行政法人日本スポーツ振興センター障害等級認定の基準に関する規程に示される等級を整理すると以下⑴~⑻のとおりになります。
高次脳機能障害と身体性機能障害の両方が発生することもありえますが、その場合はそれぞれを独立別個に評価するのではなく、高次脳機能障害の程度、身体性機能障害の程度及び介護の要否・程度を踏まえ、それらの障害による就労制限や日常生活制限の程度に応じて総合的に等級判断がなされます。
高次脳機能障害の評価については、①意思疎通能力、②問題解決能力、③学校生活に対する持続力・持久力、④社会行動能力の4能力の各々の喪失の程度に着目して行われます。詳しくは後述します。
また、脳損傷により神経局所損傷(巣症状)(中枢神経系)が引き起こされて感覚器などに障害を生じる場合もあります。これも「高次脳機能障害」とは別の病態ではありますが、該当する等級があるときはその等級が認定されます。
⑴1級の3 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの
高次脳機能障害のため、生命維持に必要な身のまわり処理の動作について、常に他人の介護を要するものと評価される場合には、第1級の3が認定されます。
具体的には、次のa~bのようなものが該当します。
a 重篤な高次脳機能障害のため、食事・入浴・用便・更衣等に常時介護を要するもの
b 高次脳機能障害による高度の痴ほうや情意の荒廃があるため、常時監視を要するもの
⑵第2級の3 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの
高次脳機能障害のため、生命維持に必要な身のまわり処理の動作について随時介護を要するものと評価される場合には、第2級の3が認定されます。
具体的には、次のa~cのようなものが該当します。
a 重篤な高次脳機能障害のため、食事・入浴・用便・更衣等に随時介護を要するもの
b 高次脳機能障害による痴ほう、情意の障害、幻覚、妄想、頻回の発作性意識障害等のため随時他人による監視を必要とするもの
c 重篤な高次脳機能障害のため自宅内の日常生活動作は一応できるが、1人で外出することなどが困難であり、随時他人の介護を必要とするもの
⑶第3級の3 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの
生命維持に必要な身のまわり処理の動作は可能であるが、高次脳機能障害のため、学校生活に著しい制限を受けているものと評価される場合には、第3級の3が認定されます。
具体的には、次のa~bのようなものが該当します。
a 4能力のいずれか1つ以上の能力が全部失われているもの
b 4能力のいずれか2つ以上の能力の大部分が失われているもの
⑷第5級の2 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの
高次脳機能障害のため、学校生活に制限を受けており、極めて軽易な活動しか行うことができないものと評価される場合には、第5級の2が認定されます。
具体的には、次のa~bのようなものが該当します。
a 4能力のいずれか1つ以上の能力の大部分が失われているもの
b 4能力のいずれか3つ以上の能力の相当程度が失われているもの
⑸第7級の4 神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの
高次脳機能障害のため、学校生活に制限を受けており、軽易な活動しか行うことができないものと評価される場合には、第7級の4が認定されます。
具体的には、次のa~bのようなものが該当します。
a 4能力のいずれか2つ以上の能力の相当程度が失われているもの
b 4能力のいずれか3つ以上の能力が多少失われているもの
⑹第9級の10 神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの
通常の学校生活を送ることはできるが、高次脳機能障害のため、参加可能な活動が相当程度に制限されるものと評価される場合には、第9級の10が認定されます。
具体的には、高次脳機能障害のため4能力のいずれか1つ以上の能力の相当程度が失われているものが該当します。
⑺第12級の13 局部に頑固な神経症状を残すもの
学校生活を送ることはできるが、高次脳機能障害のため、多少の障害を残すものと評価される場合には、第12級の13が認定されます。
具体的には、4能力のいずれか1つ以上の能力が多少失われているものが該当します。
⑻第14級の9 局部に神経症状を残すもの
学校生活を送ることはできるが、高次脳機能障害のため、軽微な障害を残すものと評価される場合には、第14級の9が認定されます。
具体的には、MRI、CT等による他覚的所見(高次脳機能障害の場合には脳損傷の所見)は認められないものの、脳損傷のあることが医学的にみて合理的に推測でき、高次脳機能障害のためわずかな能力喪失が認められるものが該当します。
スポーツ振興センターの等級認定システム
⑴評価の着眼点
前述のように、高次脳機能障害の評価については、4能力の喪失の程度を確認することにより行われます。4能力とは、①意思疎通能力、②問題解決能力、③学校生活に対する持続力・持久力、④社会行動能力の4つになります。
①意思疎通能力(記銘・記憶力、認知力、言語力等)
学校生活において他人とのコミュニケーションを適切に行えるかどうか等について判定されます。
・記銘力、記憶力
・認知力
・言語力
②問題解決能力(理解力、判断力等)
学校で出される課題等に対する指示や要求水準を正確に理解し適切な判断を行い、円滑に業務が遂行できるかどうかについて判定されます。
・理解力
・判断力
・集中力(注意の選択等)
③学校生活に対する持続力、持久力
一般的な学校生活に対処できるだけの能力が備わっているかどうかについて判定されます。
・精神面における意欲、気分又は注意の集中の持続力、持久力
・意欲又は気分の低下等による疲労感や倦怠感
④社会行動能力(協調性等)
学校生活において他人と円滑な共同作業、社会的行動ができるかどうか等について判定されます。
・協調性の有無
・不適切な行動(突然大した理由もないのに怒る等の感情や欲求のコントロールの低下による場違いな行動等)の頻度
⑵能力の喪失の程度について
4能力の喪失の程度については、5段階に分けられており、「特に問題ない」・「困難はあるが概ね自力でできる」・「困難はあるが援助があればできる」・「困難が著しくて大きい」・「できない」の5段階となります。能力の喪失の程度との関係性は、おおむね下表のとおりとなります。

たとえば、意思疎通能力、問題解決能力、社会行動能力につき「困難はあるが援助があればできる」と評価された場合、3つの能力について「相当程度」喪失しているものということができますから、5級の2が認定されることとなります。
高次脳機能障害における等級認定のポイントとは

スポーツ振興センターの災害共済給付における高次脳機能障害の等級認定判断のポイントは次の3つです。
⑴学校事故による脳の損傷を裏付ける画像検査結果があること
⑵一定程度の意識障害が継続したこと
⑶一定の異常な傾向が生じていること
これらを総合考慮して、脳外傷による高次脳機能障害として等級認定できるか否か、認定できるとして程度は「等級として何級なのか」が判断されます。
最も重視されているのは1の画像所見の有無です。
⑴学校事故による脳の損傷を裏付ける画像検査結果があること
前記のとおり、高次脳機能障害の原因になる脳損傷には、局所性脳損傷とびまん性脳損傷があります。
局所性脳損傷は脳挫傷や各種頭蓋内出血(脳内血腫や急性硬膜下血腫など)を指します。
びまん性脳損傷は、外傷後より意識障害などの症状があるにも関わらず、頭部CT上、脳を破壊もしくは圧迫するような出血(局所性脳損傷)が明らかではない点に特徴があります。
①撮影方法
CTやMRI画像での経時的観察による脳出血(硬膜下出血、くも膜下出血などの存在とその量の増大)像や脳挫傷痕の確認があれば、外傷に伴う脳損傷の存在が確認されやすいです。
CTで所見を得られない患者について頭蓋内病変が疑われる場合は、CTよりも多くの情報を得られるMRI画像の撮影を早期にすることが望ましいとされています。
また、受傷後時間が経過した場合には、それでも鋭敏に微細な出血痕等を描出することができるMRIのSWI撮影により確認することができる可能性があります。
もっとも、どのような検査を行うか、また画像診断の方法等については、担当医の方針によって異なる面もありますので、医師の判断に委ねたほうがよいのではないかと思います。
②画像所見の評価
撮影方法は上記のとおりですが、局所性脳損傷の場合はともかく、びまん性軸索損傷についてはこれらの撮影結果のみで発症を確認することは困難であり、あくまで補助的な診断にとどまります。
びまん性軸索損傷の病態は、「外傷によりミクロレベルで脳細胞間の情報伝達を行う軸索(神経線維)が断裂して機能障害をきたしている状態」だと考えられていますが、ミクロレベルの軸索の断裂それ自体を現在の画像撮影技術で撮影することが困難だからです。
そこで、スポーツ振興センターの障害認定実務においては、MRIやCT検査により、脳室拡大や脳溝拡大などの脳萎縮がみられ、およそ3か月程度でその固定が確認されれば、軸索組織の障害が生じたことを合理的に疑うことができ、出血や脳挫傷の痕跡が乏しい場合であっても、びまん性軸索損傷の発症を肯定しうるものとされています。上記で「経時的な」と記載したニュアンスはここからきています。
③新しい画像検査について
近時、CT、MRI以外に脳外傷の発生の有無を確認するものとして、SPECT検査、PET検査、拡散テンソルMRI、MRS等の新しい画像検査が現れています。
ただ現在のところ、CT、MRI以外の画像検査について、外傷性脳損傷の発見の性能についての評価が固まっている状態ではなく、スポーツ振興センターでの審査においては「補助的な検査方法として参考になる場合がある」という程度の扱いにとどまるものと考えられます。
⑵一定程度の意識障害が継続したこと
脳外傷による高次脳機能障害は、一般に、意識障害を伴うような頭部外傷後に起こりやすいとされています。意識障害は、事故に伴う脳損傷の場合は事故直後から発生することが多く、頭蓋内血腫や脳腫脹など脳がむくんでしまうような病態の場合は、事故から一定期間経過後に発生しやすいと言われています。
以下では、意識障害の評価指標として非常に有名な2つを紹介いたします。
JCS(Japan Coma Scale ジャパン・コーマ・スケール)
JCSは、日本において用いられている意識障害の評価指標をいいます。
覚醒の程度によって、Ⅰ(1桁)、Ⅱ(2桁)、Ⅲ(3桁)の三段階に大きく分け、さらにそれを3段階に分けます。
点数は「Ⅱ-20」、「Ⅲ-100」などと表記します。健常者(意識清明)は「0」と表記されます。
点数が高いほど状態が悪いということになります。
Ⅰ:刺激しないでも覚醒している状態
| 0 | 意識清明 |
| 1(Ⅰ-1) | 意識清明とは言えない |
| 2(Ⅰ-2) | 当見識障害がある |
| 3(Ⅰ-3) | 自分の名前、生年月日が言えない |
Ⅱ:刺激すると覚醒
| 10(Ⅱ-10) | 普通の呼びかけで容易に開眼する |
| 20(Ⅱ-20) | 大きな声または体を揺さぶることにより開眼する |
| 30(Ⅱ-30) | 痛み刺激を加えつつ呼びかけを繰り返すと辛うじて開眼する |
Ⅲ:刺激しても覚醒しない状態
| 100(Ⅲ-100) | 痛み刺激に対し、払いのけるような動作をする |
| 200(Ⅲ-200) | 痛み刺激で少し手足を動かしたり顔をしかめる |
| 300(Ⅲ-300) | 痛み刺激に全く反応しない |
GCS(Glasgow Coma Scale グラスゴー・コーマ・スケール)
GCSは、主に海外において用いられている意識障害の評価指標のことです。
開眼機能(E)、言語機能(V)、運動機能(M)の3要素に分けて意識状態を指標化し、合計点数により評価します。
合計点は「7(E1 V2 M4)」などと表記します。健常者だと15点(満点)、最低点は3点です。
点数が高いほど状態が悪いということになります。
開眼(E:eye opening)
| 自発的に開眼 | 4 |
| 呼びかけにより開眼 | 3 |
| 痛み刺激により開眼 | 2 |
| なし | 1 |
言語(V:verbal response)
| 見当識あり | 5 |
| 混乱した会話 | 4 |
| 不適切な単語を使う | 3 |
| 無意味な発声 | 2 |
| 発語が無い | 1 |
運動機能(M:motor response)
| 指示に従う | 6 |
| 痛み刺激の部位に手足を持ってくる | 5 |
| 痛みに手足を引っ込める(逃避屈曲) | 4 |
| 痛みに上肢を異常屈曲させる(徐皮質姿勢) | 3 |
| 痛みに上肢を異常伸展させる(徐脳姿勢) | 2 |
| 全く動かない | 1 |
⑶一定の異常な傾向が生じていること
脳外傷による高次脳機能障害の残存を疑わせる異常な傾向(多彩な認知障害、行動障害および人格変化や身体障害(起立障害・歩行障害、痙性片麻痺))が、頭部外傷を契機として発生していることが必要になります。
人格変化と身体障害を除く異常な傾向については神経心理学的検査で一定の評価が可能です(逆に言えば、人格変化は周囲にいる人しか気づけない、気づきにくい症状だと言えます。)。
代表的な神経心理学的検査
| スクリーニング
(高次脳機能障害がありそうかどうかの選別) |
ミニメンタルステート検査(MMSE) |
| 改定長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R) | |
| 知能 | WAIS-Ⅲ |
| コース立体組み合わせテスト | |
| 注意 | 標準注意検査法(CAT) |
| Trail Making Test(TMT) | |
| BIT 行動性無視検査(BIT) | |
| 注意機能スクリーニング検査(D-CAT) | |
| 遂行機能 | 遂行機能障害症候群の行動評価(BADS) |
| ウィスコンシンカード分類検査(WCST) | |
| Frontal Assessment Battery(FAB) | |
| 記憶 | ウェクスラー記憶検査(WMS-R) |
| リバーミード行動記憶検査(RBMT) | |
| 三宅式記銘力検査 |
高次脳機能障害における等級認定申請時に必要な資料とは?
スポーツ振興センターの災害共済給付では、高次脳機能障害の等級認定にあたり、「障害診断書(障害見舞金支払請求用)」(以下「障害診断書」といいます。)の他に、的確な障害の症状把握を目的として、主治医に対して障害の状態について医療照会が行われることが多いです。医療照会が行われる場合には、「脳損傷又はせき髄損傷による障害の状態に関する意見書(別記様式第1)」と呼ばれる様式が用いられ、高次脳機能障害の具体的症状の他、麻痺の範囲や程度等の身体性機能障害の有無及び程度、介護の要否等についての医学的知見が確認されることとなります。
高次脳機能障害の等級認定により支払われる障害見舞金の金額は?
スポーツ振興センターの災害共済給付について、後遺障害等級が認定されると、下表のとおり等級に応じた障害見舞金が支払われることとなります。

注意点としましては、「通学中及びこれに準ずる場合」には、支払われる障害見舞金の額が通常の場合と比べて半額になることです。「通学中及びこれに準ずる場合」の具体的内容については次の①~③が挙げられています。
①児童生徒等が通常の経路及び方法により通学する場合
②上記①に準ずる場合。すなわち、児童生徒等が学校以外の場所で授業(実習、見学等)又は課外指導(部活動等)が行われる場所(その場所以外の場所で集合し又は解散するときは、その場所を含む。)と住居との間を合理的な経路及び方法により往復する場合
③寄宿舎と住居との間を往復する場合
高次脳機能障害にて等級認定を受けた場合の損害賠償金額は億単位になることもあります

弁護士小杉晴洋
上記表にて説明したスポーツ振興センターの障害見舞金の金額というのは、あくまで最低補償の金額であり、学校事故にて高次脳機能障害の後遺障害を残してしまった場合の損害賠償金額としてはおよそ十分ではありません。
学校事故で高次脳機能障害となってしまったという方については、無料の法律相談を実施しておりますので、お気軽にお問い合わせください。
学校事故での高次脳機能障害の損害賠償金額を高める上で注目すべき損害賠償費目について

一般的に学校事故によって損害が生じた場合には、以下のようなものを請求することができます。(※がついている費目は日本スポーツ振興センターの障害見舞金支払請求において後遺障害等級が認定された場合に請求に加えることができます。)
・治療費
・入院に際して負担した入院雑費
・通院に際して要した通院交通費
・治療のために仕事を休まざるを得なかった際の休業損害
・後遺障害の逸失利益※
・傷害慰謝料(入通院慰謝料)
・後遺症慰謝料※
これらに加えて、高次脳機能障害を残すに至った場合には、その障害の程度に応じて以下のような費目を請求できる可能性があります。
⑴症状固定後の治療費
一般的に、損害賠償請求における治療費は、症状固定日までに要した金額しか請求できませんが、残存している症状の内容や程度等の具体的な事情を考慮し、支出が相当であると認められる場合には、症状固定後に要した治療費も損害として認定されることがあります。
高次脳機能障害の場合、症状固定を迎えた後も定期的な治療や経過観察などが必要になる可能性がありますので、その治療費を請求できる可能性があります。
⑵将来治療費
残存している症状の内容や程度等の諸般の事情を考慮した上で、将来治療の必要性や相当性が認められる場合に、損害として認定される傾向があります。
症状固定後の治療費と同様に、通常、損害賠償請求では認められないことが多いですが、脊髄損傷の後遺症の内容や程度等を勘案して、将来的にも治療費の負担が考えられる場合には認定されることがあります。
・大阪地判平成17年8月24日(自保ジ1629・8)8
高次脳機能障害2級の女児(7歳)につき、運動機能の改善のために必要かつ効果的な治療であるとして、症状固定後85歳までの鍼灸治療費(ただし、この効果が見られるのは運動発達が見込まれる18歳までであるから、19歳以降は18歳までの半分の頻度での通院治療を認めるとして)16万円余を認めた。
⑶付添看護費用
付添看護費用は、入院付添費・通院付添費・自宅付添費があります。
入院付添費は、医師の指示又は受傷の程度、被害者の年齢等を鑑みて必要性が認められれば、職業付添人については実費全額、近親者付添人は1日につき6500円換算(具体的看護の状況により増減あり)で被害者本人の損害として認定されることが多いです。
通院付添費は、症状又は幼児等付添が必要と認められる場合に、被害者本人の損害として肯定され、一般的に1日につき3300円で算定されることが多いです。
自宅付添費は、症状や被害者の年齢等から、自宅において近親者や職業付添人の付添が必要かつ相当であると認められる場合に認定される傾向があります。
たとえば高次脳機能障害によって食事や用便等を被害者が独力で行うことができないために、家族が日頃から介助をしなければならなくなったような場合などに認められる可能性があります。
⑷将来介護費
医師の指示又は症状の程度により必要性が認められれば被害者本人の損害として認定されます。この時、金額は、職業付添人は実費全額、近親者付添人は1日につき8000円で算定されることが多いです。なお、訴訟中に被害者が死亡した場合には、死亡以降の介護は不要になるため、死亡後の介護費用は損害として認められません。
高次脳機能障害について3級以上に認定された事例では、多くの裁判例が将来介護費の必要性を認めており、5級以下の事例では個別の事情により判断がわかれています。
職業付添人による介護の必要性については、現に施設を利用して介護を行っている事実や、ヘルパー又は職業付添人に依頼している事実が認められる場合には、以降も同様の状況での介護の必要性を認知している裁判例が多いです。
現在の介護状態が近親者による介護である場合には、今後も近親者による介護がされることを前提に介護費が認定されることが多いですが、被害者の要介護状態、介護者の介護能力、介護者の就労状況・就労の意思等から、将来的に職業付添人による介護が必要と判断される場合には、これを考慮した将来介護費が認定されています。
なお、2024年版の民事交通事故訴訟損害賠償算定基準(俗に「赤本」)上巻(基準編)28頁によれば、次のように記載されていて、金額算出時の目安になります。
「職業付添人は実費全額、近親者付添人は1日につき8000円。但し、具体的看護の状況により増減することがある」
⑸将来の通院交通費
将来的にも通院する必要性や相当性が認められる場合に、損害として認定されると考えられます。
⑹装具・器具等購入費
車椅子や介護支援ベッド等、必要性が認められる場合に損害として認定される傾向にあります。
・大阪地裁判決平成12年10月30日(交民33・5・1709)
脳挫傷により随時介護を要するとされた(2級)被害者(男・症状固定時7歳)につき、平均余命70年間にわたり、歩行補助具(18歳までの11年間は身体成長に伴い年1回、その後は4年に1回の交換)及び車椅子(5年に1回の交換)の購入費100万円を認めた。
・大阪地判平成15年8月29日(自保ジ1529・16)
1級の小学生(男・8歳)につき、書字困難で会話も流暢でない場合に、意思伝達および情報収集の手段としてパソコンおよび障害者用マウス(購入費30万円余)が必要であり、平均余命66年間、耐用年数6年毎の買替えを要するとして、合計703万円余を認めた。
⑺家屋・自動車等改造費
被害者の受傷の内容、後遺症の程度及び内容を具体的に検討し、必要性が認められる場合に、相当額が損害として認定されます。判例上、浴室やトイレ、玄関等の出入口、エレベーター、自動車の改造費等が認定されています。なお、家屋改造等により被害者以外の家族の利便性が向上すると認められる場合には、反射的利益に過ぎないとして減額がなされないこともあれば、割合で減額がなされる可能性もあります。
・前橋地判高崎支部判決平成16年9月17日(自保ジ1562・3)
高次脳機能障害、四肢体幹機能障害)1級)の大学生(男・固定時21歳)につき、住宅改造費(リハビリ用スペースを確保し車椅子での移動を可能とするための洋室15畳・トイレ・浴室等の改修工事費、電気設備工事費、給排水等衛生設備工事費、各室段差工事費、スロープ・手摺り設置工事費、アスファルト舗装工事費)は被害者の生活およびその介護にとり不可欠なものであり、家族による便益享受はあくまでも副次的に生ずるとして、請求どおり1051万円を認めた。
・東京地裁判決平成17年3月17日(判時1917・76)
高次脳機能障害1級の被害者(男・29歳)につき、トイレ・浴室・居室・玄関等の改造、昇降リフトの設置費用等442万余、昇降リフトの買替費用(耐用年数10年、5回分)355万円、将来の同点検費用36万円余、今後行うバリアフリー化等費用は同居家族の利便性を考慮して約70%の510万円、合計1344万円余を認めた。
⑻父母の休業損害
たとえば、小学生のお子さんが学校事故で脳挫傷を負い入院したり通院をしなければならなくなった場合に、ご両親が付添をされる可能性もあるかと思います。付添をする際に、仕事を休まざるをえなかったり、または有給休暇を使用せざるを得なかったようなときには、それを休業損害として請求できる可能性があります。
なお、実際にどのような損害を請求することができるかについては、具体的なご事情によっても異なってくるところがありますので、
お悩みの場合は一度弁護士にご相談いただくことをおすすめいたします。
⑼慰謝料(精神的損害)
慰謝料は、基本的には被害者が受けた精神的苦痛に対する損害の賠償ですが(民法第710条)、被害者が死亡した事案では被害者の父母、配偶者及び子について固有の慰謝料請求権が認められています(民法第711条)。
ただ、死亡時案でなくても「重度の後遺障害の場合には、近親者にも別途慰謝料請求権が認められる」(2024年版赤本上巻234頁)とされており、この場合では被害者本人の慰謝料とは別個に親族固有の慰謝料請求が可能です。
①高次脳機能障害被害者本人の慰謝料
被害者本人に発生する慰謝料としては、事故日から症状固定日までの治療期間に対応する慰謝料(傷害慰謝料)と、残存した後遺障害の等級に応じた後遺症慰謝料の2つがあります。
いずれについても赤本記載の基準額を原則とし、事案に応じて調整がなされることがあるという印象です。
Ⅰ 傷害慰謝料の金額(治療期間に対応する入通院慰謝料金額)
赤本の基準では、入院期間、通院期間に応じて目安となる基準額が決まります。
たとえば入院3か月+通院9か月の事案なら226万円、入院のみ12か月の事案なら321万円となっています(2024年版赤本上巻212頁の別表Ⅰ)。
Ⅱ 後遺症慰謝料の金額
裁判基準金額は以下のとおりです。
| 第1級 | 2800万円 |
| 第2級 | 2370万円 |
| 第3級 | 1990万円 |
| 第4級 | 1670万円 |
| 第5級 | 1400万円 |
| 第6級 | 1180万円 |
| 第7級 | 1000万円 |
| 第8級 | 830万円 |
| 第9級 | 690万円 |
| 第10級 | 550万円 |
| 第11級 | 420万円 |
| 第12級 | 290万円 |
| 第13級 | 180万円 |
| 第14級 | 110万円 |
なお、高次脳機能障害で認定されうる等級は1,2,3,5,7,9,12,14級ですが、14級を除き、他の後遺障害と併合されて最終等級が繰り上がることはあり得ます。
たとえば、高次脳機能障害5級と一下肢の機能障害12級が認定された場合、重いほうの等級が1つ繰り上げられるため、最終等級は併合4級となります。
後遺症慰謝料について、事例は少数ではありますが、予測困難な将来発生する費用や高次脳機能障害以外の後遺障害の内容・程度等を考慮し、赤本の基準金額より増額している事例もあります。
その他、高次脳機能障害の事例に限りませんが、加害者による事故後の著しく不誠実な態度(救護活動を行わずに現場から逃走し、証拠隠滅した事例など)により、被害者の精神的損害が増大した場合には増額理由になりえます。
他方、被害者の収入状況や生活状況に大きな変化がみられないこと等、事故後の実質的な不利益が後遺障害等級に比して小さいとみられる場合には、赤本の基準金額よりも低い後遺障害慰謝料が認定されることもあります。
②高次脳機能障害の被害者の家族固有の慰謝料
「重度の後遺障害の場合には、近親者にも別途慰謝料請求権が認められる」(2024年版赤本上巻234頁)とされており、この場合では被害者本人の慰謝料とは別個に親族固有の慰謝料請求が可能です(死亡慰謝料の基準が基本的には近親者固有分を含むとしている(2024年版赤本上巻203頁)のとは異なります。)。
高次脳機能障害について認定した裁判例では、後遺障害等級2級以上の事案では近親者固有の慰謝料が認められることが一般的で、3級の事案でも認められるものが多いです。他方、4級以下の事案では個別の事情により判断が分かれています。
固有の慰謝料を請求できる「近親者」の範囲ですが、基本的には民法第711条規定の父母、配偶者及び子になっていますが、兄弟姉妹や事実上の母親(事故時から実父と内縁関係にあった女性でその後正式に婚姻した)で認められたケースもあります。
どのような近親者にそれぞれどのくらいの固有慰謝料が認められるかについては、被害者との関係、後遺障害の程度、要介護状態等によって個別に判断されており、被害者の後遺障害の程度が重く、被害者と密接な関係を有し、介護の負担が大きい近親者ほど固有慰謝料の金額が高く認められる傾向があります。
高次脳機能障害等級認定に関するその他の注意点

高次脳機能障害の被害者が小児・児童の場合、能力や発達は人それぞれで、高次脳機能の検査を行うことが困難であるケースもあります。
日常および学校生活などを観察することも小児の高次脳機能の評価に重要ですが、年少児ほど評価に時間を要するケースがあります。
例えば、中学生になって初めて、高校生になって初めて、とか、成人に近づく周囲の児童と比較することでやっと被害児童の症状が顕在化するケースもあります。
乳幼児の場合はそもそも正常だとしても高次脳機能が発達していないので、神経心理学的検査自体も施行できず、疑う症状があったとしても、年少になるほど、それが頭部外傷によるものか、その子自身の発達の問題なのか等判別が困難になります。
この問題は、治療期間はいつまでなのか(症状固定時期がいつなのか)という問題と関連します。
成人の外傷性高次脳機能障害の場合、受傷後12か月程度は改善を示す可能性があると言われますので、少なくともそのくらいの治療期間が参考になるものと思われますが、小児の場合の「あとでわかるかもしれない」懸念を考慮すると、どのくらいの年数治療をうけなければいけないのか、判断が難しいところです。
早期に示談等で解決するにしても、免責証書や示談書に「後日、本件事故に関する後遺障害が判明した場合には別途協議をする。」等の留保の文言を加えておくべきでしょう。
高次脳機能障害に関する等級や賠償金額については専門の弁護士に相談を

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