学校事故コラム

時効

【時効】学校時被害に遭った場合の時効は何年?

2022.01.29

【時効】学校時被害に遭った場合の時効は何年?

時効とは何か

民法には、時効という制度があります(民法第144条以下)。

時効制度には、取得時効と消滅時効がありますが、学校事故に関係するのは消滅時効です。

「権利の上に眠るものは保護に値せず」という法諺や、永続した事実状態の尊重という言葉があります。

いつまで経っても損害賠償請求ができるということにはなっていませんが、他方で、すぐに損害賠償請求をしなければならないということにもなっていません。

では、慰謝料などの損害賠償請求権は、具体的に何年で消滅時効にかかってしまうのでしょうか?

 

原則5年で時効にかかります

学校事故被害に遭った場合の損害賠償請求というのは、民法では債務不履行に基づく損害賠償請求権(民法第415条)か不法行為に基づく損害賠償請求権(民法第709条)で構成することになります。

これらの損害賠償請求権というのは、いずれの構成をとっても、原則として5年で時効にかかるとされています(民法第166条1号1号,民法第724条の2)。

 

学校事故の日から計算して5年以内に損害賠償請求しなければ時効にかかってしまうのか?

5年の時効期間というのはいつから数えるのでしょうか?学校事故の日から計算するのでしょうか?

民法上、消滅時効の起算点は、「債権者が権利を行使することができることを知った時」ないし「被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時」から5年と規定されています(民法第166条1項1号,民法第724条の2・民法第724条1号)。

では、この「債権者が権利を行使することができることを知った時」や「被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時」というのは、いつの時点をいうのでしょうか?

学校事故によってケガをしてしまった場合、ケガの程度によって慰謝料額などは変わってきますから、治療が終了するまでは、損害が確定できないということになります。

したがって、学校事故発生日を起算点とするのではなく、治療終了日(症状固定日)から数えて5年で時効にかかるものとされています。

ただし、加害者サイドから、治療終了日(症状固定日)を争われることもあり、裁判において主治医が判断した治療終了日(症状固定日)が否定されることもあるので、注意が必要です。

また、後遺症が残らずに完治したという場合には、治療終了日ではなく、事故発生日から5年で時効にかかるとする裁判例もあるため、この点も注意が必要です。

後遺症の有無、治療終了日がいつか否かにかかわらず、学校事故発生の日から5年で時効にかかると思っておいた方が、被害者側の態度としては安全ということができます。

なお、学校事故発生日において加害者が判明しなかった場合は、学校事故発生の時から20年で時効にかかります(民法第724条2号)。

 

時効は止めたり伸ばしたりすることができます(①示談提案・一部弁済・②裁判・③内容証明)

時効には、完成猶予や更新という制度があり、時効期間を止めたり伸ばしたりすることができます。

すなわち、学校事故による損害賠償請求は、必ず5年以内に解決しなければならないということではありません。

具体的に、よく用いられる3つの方法を紹介します。

①加害者側や学校側から示談提案や一部弁済を受ければ時効は止まる

民法では、「時効は、権利の承認があったときは、その時から新たにその進行を始める。」と規定されています(民法第152条1項)。

このままだともうすぐ時効にかかってしまうという状況の場合は、加害者側や学校側に連絡をして、いくらだったら出せるのかという提案をし、とりあえずの示談提案を受けるのが得策といえます。

また、裁判例上、債務の一部弁済も、債務の承認を表明するものと捉えられていますので(大審院大正8年12月26日判決 民録25号2429頁)、このままだともうすぐ時効にかかってしまうという状況の場合は、とりあえず少額でも慰謝料額などの支払をさせるというのも得策といえます。

なお、時効期間が過ぎた後に、示談提案を受けたり、一部弁済を受けた場合も、加害者側や学校側は、時効主張をすることができなくなります(最高裁判所昭和41年4月20日大法廷判決 民集20巻4号702頁)。

②裁判をすれば時効は止まる

このままだともうすぐ時効にかかってしまうという状況の場合は、とりあえず裁判をすることで時効は止まります(民法147条1項1号)。

①の加害者側や学校側から示談提案を受けたり一部弁済を受けたりして時効を止めるという方法は、相手がそれらの行動をしてくれなければ時効は止まりませんが、裁判をすることは加害者側や学校側の同意がなくてもできますので、加害者側や学校側が示談提案や一部弁済をしてくれないという場合は、裁判所に対して訴訟を提起することによって時効を止めましょう。

③内容証明郵便を出せば時効が半年伸びる

民法では、「催告があったときは、その時から6か月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。」と定められています(民法第150条1項)。

加害者側や学校側が示談提案や一部弁済をしてくれず、もうすぐ時効が完成してしまうが、裁判をする準備がまだ整っていないという場合は、とりあえず内容証明郵便を加害者側に発送して、時効を半年伸ばしましょう。

この催告というのは、加害者側や学校側に対して、「あなたに対して、令和●年●月●日午前●時●●県●●市●番●所在の●●学校にて発生した事故について、損害賠償請求をする予定です。」という程度の記載で足りますので、ご自身にて発送できますし、本当に催告の効果が生じるのか不安であれば、弁護士に依頼することによってすぐ発送してくれます。

内容証明郵便の発送によって時効期間を半年間伸ばし、その間に②の裁判の準備をして、正式に時効を止めることになります。

なお、催告というのは、何回も行って、半年ずつ時効を伸ばすことは許されておらず、1回に限り有効とされています(民法第150条2項)。

 

スポーツ振興センターへの申請は時効期間が2年なので注意が必要

学校事故の場合、スポーツ振興センターから治療費を支払を受けて治療し、また、治療終了後はスポーツ振興センターから後遺障害等級の認定をしてもらった後に、加害生徒や学校に対して損害賠償請求を行うということが多いです。

このスポーツ振興センターの給付金の支払は、加害生徒や学校に対する損害賠償請求と異なり、2年で時効にかかるとされていますので、注意が必要です。

医療費の支払、障害見舞金の支払、死亡見舞金の支払ごとに時効の起算点が異なりますので、それぞれ見ていきます。

医療費の時効

医療費の支払は月ごとに精算されますが、最後に病院や診療所を受診した月の翌月11日から起算して、2年が経過すると、スポーツ振興センターに対する医療費の請求はできないことになっています。

障害見舞金の時効

スポーツ振興センターは、後遺障害等級に応じて41万円~3770万円の障害見舞金を支払ってくれますが、この権利は、治療終了日(症状固定日)の属する月の翌月11日から起算して2年が経過すると、時効消滅してしまいます。

死亡見舞金の時効

死亡見舞金は、死亡日の翌日から起算して2年を経過すると、時効によって請求できなくなってしまいます。

なお、遠足・修学旅行などの課外活動や部活動の際に遭難したようなケースで死亡が確認されないといった場合(行方不明の場合)は、失踪宣告がされた日の翌日から2年で時効にかかるとされています。

 

学校事故で時効期間が気になる方は被害者側専門の弁護士に相談しましょう

時効期間はいつから数えるのか、時効期間の中断はなされたのか、これから時効を止めることはできるのかといった事柄は、専門の弁護士でなければ判断がつかないこともあります。

学校事故から長い年月が経っているということは、その分、遅延損害金が多く発生しているということでもあります(令和2年3月31日以前の学校事故だと年5%・令和2年4月1日以降の交通事故だと年3%の金利が付きます。)。

時効にかかってしまったと思われるようなケースであっても、時効の起算点をずらしたり、中断事由などを生じさせることによって請求が可能となることもあります。

以前に学校事故に遭われてしまったという方で、時効が気になるという方・すでに時効だと思ってあきらめかけているという方は、無料で法律相談を実施しておりますので、まずはご相談ください。

 

この記事の執筆者

小杉 晴洋
小杉 晴洋

被害者側の損害賠償請求分野に特化。
死亡事故(刑事裁判の被害者参加含む。)や後遺障害等級の獲得を得意とする。
交通事故・学校事故・労災などの損害賠償請求解決件数1000件超。

経歴
小杉法律事務所代表弁護士。
横浜市出身・福岡市在住。明治大学法学部卒。中央大学法科大学院法務博士修了。

所属
横浜弁護士会(当時。現「神奈川県弁護士会」)に登録後(損害賠償研究会所属)、福岡県弁護士会に登録換え(交通事故委員会所属)。