脊髄損傷
脊髄損傷|ポイントとなる画像は何?XP、CT、MRIの違いは?【学校事故被害者専門弁護士】
2024.05.17
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学校の管理下における事故(学校事故)によって脊髄損傷を負い、治療・リハビリの結果後遺症が残ってしまった場合、独立行政法人日本スポーツ振興センターの災害共済給付契約に加入していれば、同制度に定められている障害見舞金の支払を請求することができます。
障害見舞金支払請求における後遺障害の認定調査においては、主治医に作成してもらう『障害診断書(障害見舞金支払請求用)』や『脳損傷又はせき髄損傷による障害の状態に関する意見書』のほか、脊髄損傷の存在を客観的に示す資料として、病院で撮影された画像もまた重要視されています。そのため、見舞金支払請求後に、画像資料の提出を追加で求められることもあります。
これは裏を返すと、画像撮影が十分でなかったり、そもそも画像の撮影自体が行われていなかったりすると、客観的に後遺障害の存在を証明することができないとして、適切な後遺障害等級が認定されない可能性もあります。
したがって、ポイントとなるのは「どのような画像を撮影するか」と「いつ画像を撮影するか」になります。
学校事故により頚髄損傷や胸髄損傷、腰髄損傷などの脊髄損傷を負傷してしまったとき、病院でどのような画像を撮影してもらうとよいでしょうか。本稿ではこの点に関して解説いたします。
重要な3つの画像
医療の世界においては、患者の体の状態を確認するための手段として、様々な画像診断が行われています。
スポーツ振興センターの障害見舞金支払請求における後遺障害等級認定調査において重要な画像は、
XP、CT、MRIの3つになります。
これらはそれぞれ撮影できる対象が異なるため、XPでは確認できるけどMRIでは確認できないものもあれば、逆にMRIでないと確認できないものもあります。
では、それぞれの違いについて見ていきましょう。
⑴XP(レントゲン撮影)
XPはX-ray Photograph の略であり、直訳すると「X線撮影」を意味します。
病変・傷病の有無や鑑別のために利用される撮影方法であり、主に骨や臓器の状態などを確認するために撮影されることが多いです。他方、靭帯や腱、筋肉などの軟部組織や神経はXPではほとんど映らないので、XP画像でそれらに生じている病変や傷病等を確認することはできません。
脊髄損傷においては、脊椎(一般的に背骨と呼ばれる部分)の骨折・脱臼の有無、脊椎のすべりの有無、脊柱管狭窄、椎間板狭小化、骨棘の状態、後縦靭帯骨化の有無等が確認できるかがポイントとなってきます。
⑵CT
CTはComputer Tomography の略であり、「コンピューター断層撮影」を意味します。
XP撮影と同様にX線を用いて行われる撮影方法であり、人体に照射され透過してきたX線をコンピューターで読み取り、輪切りの画像として立体的に出力されます。描出を鮮明にするために、造影剤が用いられることもあります。
CTでは、XPと同様に、主に骨や臓器の状態を確認することができます。ただし、CTは三次元的な画像であるため、二次元的なXPと異なり、より細かな病変や傷病を確認することができます。
脊髄損傷に関していえば、脊椎の状態が明瞭に描出されるため、椎間関節の骨折・脱臼や、椎体骨折の骨片の脊柱管内陥入の状況などを確認することができます。また、後縦靭帯骨化等による脊柱管狭窄の評価にあたっても有用な撮影手段となります。
⑶MRI
MRIは、Magnetic Resonance Imaging の略であり、「磁気共鳴画像」という意味になります。
X線を利用するXPやCTとは異なり、MRIは磁力を利用して画像を撮影します。
MRIの大きな特徴は、XPやCTでは確認できない靭帯や腱、筋肉などの軟部組織や、脊髄の病変などを確認することができる点です。
脊髄損傷においては必要不可欠な検査であり、脊髄損傷の専門病院である総合せき損センターにおいても治療方針の決定等にあたり重視されています。
脊髄髄内の変化や病変の観察・評価において有用とされており、またMRIによって脊髄断面を確認することができるため損傷高位の診断にも用いられます。
等級獲得のためのポイント
脊髄損傷において重要な3つの画像を確認したところで、
いよいよポイントとなる「どのような画像を撮影するか」と「いつ画像を撮影するか」を押さえていきましょう。
⑴どのような画像を撮影するか
脊髄損傷において欠かすことができないのがMRI画像です。
理由として、脊髄の損傷や病変は、XPやCTではほとんど確認することができないからです。
脊髄損傷の有無や損傷高位の特定、また損傷がある場合の脊髄横断面における損傷の態様(横断面全体的に損傷しているのか、あるいは一部分の損傷であるのか等)を確認するためにMRIがよく利用されています。
では、CPやCTが不要であるかというとそうではなく、
XP、CT画像は、脊髄の周辺の損傷状況を把握するうえで重要となります。
たとえば、脊椎の骨折を伴うような脊髄損傷(骨傷性脊髄損傷と呼ばれます)なのか、あるいは脊椎の骨折を伴わない非骨傷性脊髄損傷であるのかを確認することができますし、骨傷性である場合には、骨損傷の程度も把握することができます。そのほか、後縦靭帯骨化症(OPLL)や脊柱管狭窄といった、脊髄損傷に寄与するような変性所見が存在しているかどうかについても確認できます。
結論として、脊髄損傷が疑われるような場合には、MRIの撮影は不可欠といえます。言い換えると、MRIの撮影がない場合には、脊髄損傷で後遺障害の等級認定を受けることはかなり難しくなるでしょう。
また、脊髄周辺の変性所見などを把握するために、XPやCTの撮影も合わせて行われることが望ましいものといえます。
⑵いつ画像を撮影するか
スポーツ振興センターの後遺障害認定調査においては、通常、治療期間中に撮影したすべての画像が確認されることが多いです。これにより回復状況や症状経過を把握し、客観的に脊髄損傷の存在を証明できるか判断していると考えられます。
そのため、まずは事故後、なるべく早いうちにMRI、XP、CTを撮影しておくことが望ましいといえます。
また、初診にかかるのも、できる限り事故から日が空いてしまわないように注意する必要があります。
なぜならば、事故から1週間、2週間…と日が空いて画像撮影を行った場合、仮に画像に損傷所見等があったとしても、それが事故由来のものであるか(=学校事故と脊髄損傷に相当因果関係があるかどうか)について疑義が生じる恐れがあるからです。
もっとも、明らかに脊髄損傷が生じているような場合というのは事故態様も大きい傾向があり、そうすると救急搬送された先で医師が病態確認や急性期の治療方針の決定のためにこれらの画像が撮影されていることもあります。
次に、可能であれば治療期間中にもMRI等を撮影しておくことが望ましいものといえます。
そうすることで、治療による回復の経時的変化を示すことができるためです。
最後に、終診時(症状固定時)の撮影が重要となります。
これもまた、治療による経時的変化を確認するとともに、症状固定時における脊髄や脊椎等の状態を把握する必要があるからです。
画像所見により、後遺症を医学的・他覚的に裏付けることができれば、後遺障害の等級が認定されやすくなります。
以上を踏まえると、「いつ撮影するか」については、初診時と終診時(症状固定時)の撮影が重要であり、可能であるならば治療期間中にも撮影を行っておくとよいものといえるでしょう。
おわりに
学校事故により脊髄損傷を負い、運動麻痺や感覚障害などの後遺症が残存した場合に、
スポーツ振興センターの認定調査機関に脊髄損傷や後遺症の状態を適切に把握してもらい、適切な等級認定を受けるためには、MRIやXP、CTといった画像の撮影は非常に重要なポイントとなります。
そして、等級獲得に向けておさえるべきポイントは画像のほかにも数多くあるため、
障害見舞金の支払請求を行う段階からポイントを把握したうえで用意を行うことが望ましく、
そのためには後遺障害に関する経験や専門的知識が不可欠だといえます。
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